大丸心斎橋300周年企画|AYIN × MAKI Gallery で出会う「本物のアート」ファッションの延長線上でアートを選ぶ

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大阪を中心に独自の世界観を確立してきた、株式会社AYURAが運営するセレクトショップ「AYIN(アイン)」。代表である髙木一也が大切にしてきたのは、単に一つの服を売るのではなく、ライフスタイル全体を提案すること。そんなAYINが、大丸心斎橋店開業300周年を記念して、東京の表参道・天王洲に拠点を持つ現代美術ギャラリー「MAKI Gallery」とのコラボレーションを実現しました。テーマは「“思いを繋ぐ、アートで繋ぐ” POWER OF ART !!!」。

今回は、AYURA代表の髙木一也、MAKI Gallery代表の牧正大氏、そしてプロジェクトプランナーであるZOZOファッションチアリーダーの武藤貴宣氏の3名が、アートとファッション、空間づくりについて語った対談をお届けします。

(左から)「MAKI Gallery」代表 牧正大氏、「AYURA」代表 髙木一也、「ZOZO」ファッションチアリーダー 武藤貴宣氏

ファッションだけではなく、ライフスタイルとしてのアートを

――AYIN × MAKI Gallery のコラボレーションのきっかけをお聞かせください。

髙木一也(以下、髙木):実は以前から、「ファッション x アート」で何かできないか、というのは考えていたんです。ファッションとアートって、感覚的な部分ですごく近いと思っていて。そこで武藤さんに相談したのが最初のきっかけでした。

武藤貴宣(以下、武藤):髙木さんからその話を聞いたときに、ふと牧さんの顔が浮かんだんです。「このテーマなら、まず牧さんに相談したいな」と思って。一緒に方向性を話しながら、参加してもらうアーティストも選んでいきました。

AYINのお客様は、洋服を買いに来るだけじゃないんですよね。インテリアの話をしたり、美味しいお店の話をしたり、自然とライフスタイル全体の話になることが多いと思うんです。だから、ファッションの延長線上としてアートを提案できたら面白いなと思いました。

身近なアスファルトをモチーフにした、社会と自然への違和感を表現する田村さんの作品。

――今回のコラボレーションでは、アーティストの田村琢郎さんと高木耕一郎さんが参加されるそうですね。

牧正大(以下、牧):はい。田村琢郎さんはユーモアを交えながら、社会や自然に対する問いかけを表現するアーティストです。

例えば、横断歩道や「止まれ」の道路標識みたいな、日常にあるものをモチーフにした作品があります。「止まれ」という標識は、人間に対して“ここで止まれ”“スピードを落とせ”と強制的に従わせる指示ですよね。その一方で、アスファルトを突き破ってたんぽぽが生えてくる。結局、人間が作ったルールも自然の力には勝てません。

そういう強いメッセージが作品の中に込められています。すごく深いテーマなんですけど、それを難しく見せるんじゃなくて、身近なモチーフを通して表現しているのが田村さんの魅力だと思っています。

高木耕一郎さんは、少しパンク的というか、ストリート感のある世界観を持っているアーティストです。特徴的なのは刺繍を使った表現ですが、刺繍って一般的には優しいイメージがありますよね。でも、高木さんの作品はかなり強いメッセージ性がある。

熊や狼みたいな動物を擬人化して刺繍で表現しているんですが、日常的なモチーフを使いながらも、そこに社会性や感情を込めているんです。その点では、田村さんとも通じる部分がありますね。

髙木:宮古島・池間島にあるラグジュアリープールヴィラ「VILLA AYIN」のエントランスには田村さんの作品が飾られているんです。それから、田村さんと高木さんの作品はZOZO本社にも飾られています。私も田村さんの作品はいくつか持っていますし、高木さんの作品は武藤さんが個人で所有していたりもします。

髙木一也:株式会社AYURA代表取締役。大学で社会福祉を学んでいたが、21歳の時、服への情熱から「将来、アメリカ村で自身の店を持つ」という目標を掲げ古着屋で経験を積む。その後、2006年にセレクトショップ「AYIN」を立ち上げる。2009年、共同経営者の杉山太士と共に株式会社AYURAを設立。

――AYINのみで展開する独占ブランド「ZAC VARGAS(ザック ヴァルガス)」とのアーティストコラボレーションもされるそうですね。今回はどのような形になるのでしょうか?

髙木:今回はLAを拠点に活動するデザイナーブランド「ZAC VARGAS」の世界観と、田村さんと高木さんそれぞれのアーティストらしさを出しながら、作品をそのまま落とし込むのではなく、オマージュしながらギリギリのラインを攻めて制作している感じですね。Tシャツを中心に10点前後のアイテムを用意していて、オールハンドメイドで制作しています。

3人が出会って、約10年。大阪で新たに提案する、日常を彩るアート。

三人が語る、自分に合う作品の見つけ方

――ところで、みなさんはどんなきっかけでアートに興味を持つようになったんですか?

武藤:私の場合は、両親の影響が大きいですね。両親はずっとファッションが好きで、糸偏の仕事をしていました。だから、アートを“作品として買う”というより、ファッションを選ぶ延長みたいな感覚でした。

ファッションって、理屈じゃなくて「なんかいいな」という感覚で選びますよね。その感覚って、アートを選ぶときにも近いと思うんです。作家の名前とか、美術史的な背景とかは、正直あまり気にしていなくて。パッと見て「いいな」と思ったものを、直感で選んで、買わせていただいています。アートをファッションと同じ感覚で選ぶというと失礼かもしれませんが、実際のところ、そうした直感を大切にしています。

髙木:私は2016年に武藤さんとニューヨークに行ったのが最初のきっかけでした。それまでアートに触れる機会自体はあったんですけど、“空間に飾られているもの”くらいの認識だったんですよ。でも、現地で作品を間近で見て、すごく刺激を受けました。そこで実際に作品を購入したのが始まりですね。

:私の場合は、小学生くらいの頃に洋楽やアメカジが流行っていて、アメリカのカルチャーが一気に入ってきた世代なんです。映画もすごく好きでしたし、中学ではバンドも組んでいました。実は、当時は映画監督になりたいと思っていた時期もあったんですよ。映画、音楽、ファッションみたいなカルチャーに自然と惹かれていく中で、アートにも興味を持つようになっていきました。

武藤貴宣:株式会社ZOZOファッションチアリーダー。同社の最古参メンバーであり、現在は株式会社yutoriやCUBE Co., Ltd.などの顧問も務め、ファッション業界を牽引する。座右の銘は「鳴かぬから笑わせて見せようホトトギス」。業界への恩返しを胸に、粋と洒落を追求しながら、お洒落道を探求し続けている。

――アート初心者が作品を選ぶとき、何を大切にするといいですか?

武藤:一番大事なのは、やっぱり「かっこいいな」って思えるかどうかだと思います。直感ですね。パッと見て惹かれたら、「この空間にあったらどうかな」って想像して、まず買ってみる。ファッションとまったく同じ感覚だと思うんです。

「何を買えばいいか分からない」ってよく聞かれるんですけど、それって「何を食べたらいいか分からない」って言ってるのと近い気がしていて。まずは選んでみて、後から「これ好きだったな」って分かっていくものだと思うんですよね。

髙木:私も本当にファッションと同じだと思います。実際に買っていく中で、自分の好きなものが見えてくるんですよ。最初の頃は、結構いろいろ買っていました。でも、その積み重ねの中で、自分の方向性がだんだん分かってくる。今でも欲しくなったら、ファッションと同じですぐ買っちゃいますね(笑)

:話を聞いていて気づいたのは、二人とも感覚の純度が高いということです。「これかっこいい」「この色いいね」っていう感覚にすごく素直なんです。髙木さんもファッションを買うことで感覚を磨いてきたから、「自分に合いそう」「心地いい」っていう感覚で選んでいるんですよね。今まで見てきたものや買ってきたもの、その経験の積み重ねから、「これ自分に合うかも」って感じるものを選ぶのが、一番いいと思います。

私たちが扱っている作品も、感覚的に「かっこいい」と思えるものが多いんです。だから、メッセージ性やコンセプトは後からでいいと思っています。まず「なんか好きだな」「心地いいな」って感じることが大事で、後から作品の背景やメッセージを知ると、さらに好きになっていく。だから私たちも、まずは親しみを感じられる作品を選ぶことをおすすめしています。

牧正大:MAKI Gallery代表取締役。学生時代よりアート、映画、写真、ファッションなど多岐にわたるカルチャーに深く興味を持つ。アパレル業界や画廊勤務を経て、2003年にMAKI Galleryを設立。現在は表参道と天王洲に拠点を構える。現代アートコレクターでもあり、常設スペースでコレクションを年間通して無料公開している。

――MAKI Galleryでアートを選ぶ際の、牧さんのこだわりについてお聞かせください。

:ギャラリーで扱っているアーティストの作品は、自分でも全部コレクションしています。もし「あなた持ってるの?」って聞かれたときに、持ってなかったら失礼じゃないですか。だから、自分が心から好きだと思えるアーティストしか扱わない、というのはずっと大切にしています。ビジネスのために、自分では惹かれていない作品を勧めることは、私にはできないんです。自分が本当に好きだからこそ、自信を持っておすすめできる。そういうスタンスで続けています。

「ただ人気だから買う」というのは、アーティストにとっても本質的ではないと思うんです。作品ってアーティスト自身の感性が形になったものなので、私たちにとっては子どもみたいな存在なんですよね。だからこそ、純粋に「かっこいい」「好きだな」と思ってくれる人に届けたいと思っています。お客さんとアーティストが自然につながって、お互いを知りながら、一緒に育っていく。実際、そういう関係性を築いてくださるお客さんが本当に多くて、すごく恵まれているなと思います。

髙木:私自身も、セレクトショップを運営するなかで“納得できるもの”を扱うことは、ずっと変わらずに大切にしてきたことなんです。本当にかっこいいと思えるものを扱う。その方向性が牧さんとすごく近いなと感じました。実際、私自身もそこはずっと曲げずにやってきた部分だからこそ、今回一緒に取り組む中でも、価値観が自然に重なっている感覚がありますね。

武藤:牧さんはギャラリーを通じてアーティストの思いを伝える代弁者のような役割をしながら、ご自身も本当にアートが好きなコレクターなんですよね。だから、作る側の気持ちも、買う側の気持ちも両方わかる。アートに興味はあるけど、まだ買ったことがないという人は、まず牧さんが選んだ作品を実際に見て、購入するのをおすすめしたいですね。間違いないですから。

大阪で提案。人生を彩る、アートの力

――MAKI Galleryでアートを選ぶ際の、牧さんのこだわりについてお聞かせください。

髙木:実は、アートを知る前までは、“飾る”という発想自体があまりなかったんです。いろんな場所でアートを見ることはあっても、自分が空間をデザインするときに、そこまで意識することはありませんでした。

でも、アートに関わるようになってからは、空間を考えるときに「ここにこの作品があったらいいな」っていうイメージが先に浮かぶようになったんです。そのアートを前提に、色合いや雰囲気を作る感覚ですね。今では新しく店舗やヴィラを作るときも、最初からアートありきで考えることが増えました。まあ、「ここに飾りたい」って決めても、実際に買えなかったらどうするんや、って話ではあるんですけど(笑)

アートに正解はない。大切なのは、自分の直感でかっこいいと思えるかどうか。

――アートを空間に入れることで、どんな変化を感じられていますか?

:アートがあることで、空間って本当に変わるんですよね。最初は“新しいものが入った”という感覚なんですけど、だんだん空間に馴染んでいって、気づけばそこにあるのが当たり前になっている。逆に、なくなると違和感を覚えるくらいなんです。アートって、ただ飾るものではなくて、空間の空気感そのものを変えてくれる存在だと思っています。

武藤:それ、すごく分かりますね。毎日目にする場所にアートがあると、見るたびに気持ちが満たされるというか、人生そのものが豊かになっていく感覚があるんです。それを繰り返しているうちに、だんだん愛着が湧いてくる。日本人独特かもしれないですけど、愛着を持ったものって、どこか“守ってくれている存在”みたいになっていくんですよね。八百万の神じゃないですけど、自分にとって特別な存在になっていく。だから、一度アートを生活の中に取り入れると、なくてはならないものになっていくんだと思います。なくなると、心にぽっかり穴が開いたような気持ちになるんですよ。

それから、アートを選ぶときって、結局“自分に合うかどうか”を感覚的に判断しているのかもしれません。もっと言えば、家族みたいに一緒にいられる存在かどうか、みたいな感覚というか。私自身も、そういうことを直感で判断している気がします。

髙木:本当にそうですね。最初は新鮮に感じても、慣れてきたとき、なくてはならない存在になっている。だからこそ、今回のイベントを通して少しでもアートに興味を持ってもらえたら嬉しいですし、空間づくりの面白さも感じてもらえたらと思っています。

――最後に、来場者へのメッセージをお願いします。

:関東を中心に活動している私たちにとって、大阪でさまざまな感性や背景を持つ方々に出会えるのは本当に貴重な機会だと感じています。会場では、田村さんと高木さんの作品に加えて、ZAC VARGASのコラボレーションアイテムも販売しているので、今回の取り組みを通してアートをもっと身近に感じてもらえたら嬉しいです。

武藤:今回用意した作品と商品は、間違いなく素晴らしいものばかりです。ぜひ実際にご覧いただいて、気に入ったものがあれば買ってみてほしいですね。今回のコラボレーションを機に、ファッション × アートの可能性をもっと多くの人に伝えていけたらと思っています。

髙木:関西のマーケットも、ここ数年でファッションの流れが変わってきていると感じます。以前はロゴや分かりやすい派手さを重視する傾向が強かったんですが、最近はシルエットや素材感、全体の空気感で見せるファッションが増えてきた。

ちょうどそういう流れの中で、ファッション × アートという形で提案することで、ファッションと同じような感覚で、もっと自然にアートにも触れてもらえたらと思っています。スタッフ一同、作品のことを理解したうえでお届けしますので、ぜひ会場で実際に見て、楽しんでいただけたらと思います。

開催概要

イベント名:AYIN POPUP STORE

会場:大丸心斎橋店 1F POPUPスペース、6F VIPサロン

住所:大阪市中央区心斎橋筋1-7-1

期間:2026年5月29日(金)〜 6月9日(火)

営業時間:10:00 〜 20:00