東京スカパラダイスオーケストラ37年の歩みを現代アートとリサーチで読み解く展覧会「TOKYO SKA HAS NO BORDER」が開幕

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東京スカパラダイスオーケストラ37年の歩みを現代アートとリサーチで読み解く展覧会「TOKYO SKA HAS NO BORDER」が開幕のメイン画像

谷中敦「『Paradise Has No Border』に込めてきた思いを、アートとして可視化していただけたことが本当にうれしい」

エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社が企画・主催する、東京スカパラダイスオーケストラのデビュー37周年を記念した展覧会「TOKYO SKA HAS NO BORDER」が、東京・西麻布のWALL_alternativeにて開幕しました(会期:2026年8月11日~8月29日)。

本展は、東京スカパラダイスオーケストラの代表曲『Paradise Has No Border』に込められた思想を起点に、37年間にわたる活動を「平和への実践」として捉え直し、アートとリサーチによって可視化する展覧会です。アーティストによる本展のための新作に加え、メンバーへのインタビューやアーカイブから導き出されたダイアグラム、貴重な一次資料などを通して、絶えず変化し続けてきた「東京スカ」という共同体の創造性と、その根底にある「NO BORDER」の思想を多角的に読み解きます。

Photo by Ryota Haraguchi

開幕に先立ち開催された内覧会には、東京スカパラダイスオーケストラより谷中敦、GAMO、大森はじめ、NARGO、川上つよしが来場。参加アーティストや、本展のキュレーション/リサーチを務めた島影圭佑とともに会場を巡り、作品や企画に込められた思いについて語りました。


「37年の歩みを、平和への実践として捉える」──リサーチから生まれた展覧会

Photo by Keizo Kioku

冒頭では、本展のリサーチを務めた島影圭佑が企画趣旨を説明。

リサーチを進めるなかで、「スカパラの皆さんは平和を実現し、それを広げ続けている存在だということが確信に変わった」と語り、東京スカパラダイスオーケストラが“東京スカ”という独自のサウンドを通じて生み出してきた平和のあり方を、アートとリサーチの力によって可視化し、社会へ提示することを本展の出発点としたことを明かしました。

展示の中心となるダイアグラムでは、GAMOと谷中敦へのインタビューから導き出された「生命体としての東京スカパラダイスオーケストラ」という視点を可視化。GAMOが語った「動的平衡」や生命体としての代謝をヒントに、さまざまな人や音楽との出会いによって一度壊れ、再び合成され、新しい姿へと変化しながらエネルギーを交換し続けるバンドのあり方を、細胞分裂や循環を想起させる図像として表現しています。

また、メンバーそれぞれに「Paradise Has No Border」を感じた瞬間を聞いたインタビューをもとに、37年間の出来事を年輪のような同心円上にマッピング。「時代」「逆境」「世代」「国境」といったさまざまなボーダーを越えてきたエピソードを星として配置し、それらをつなぐことで、メンバーそれぞれの「NO BORDER」の軌跡を星座のように描き出しています。

通常の年表とは異なるアプローチで、37年間言葉になりきらなかったバンドのエネルギーや共同体としてのあり方を可視化した、今回の展覧会を象徴するリサーチ展示となっています。


3組のアーティストが、それぞれの表現で「NO BORDER」を翻訳

本展には、大野修、vug、小林健太の3組のアーティストが参加。それぞれ異なる表現手法を通じて、東京スカパラダイスオーケストラが体現してきた「NO BORDER」を作品へと翻訳しています。

大野修 ー異なる素材の境界を曖昧にする「NO BORDER」

大野修
《Synthesizer #2601》

音楽カルチャーを起点に、プラスチックや役目を終えた楽器など、日常にあふれる人工素材を組み合わせる「ブリコラージュ」の手法で作品を制作する大野修。

代表作《Chunk》シリーズの新作4点には、スーツ姿や管楽器、パーカッションのパーツなど、スカパラを想起させるさまざまな要素を取り入れています。谷中敦の言葉「戦うように楽しむ」から着想した佇まいも造形に落とし込み、作品を目にしたメンバーからは「すごい」「武将みたい」「トロンボーンもある」と、細部を発見するたびに驚きの声が上がりました。

大野は自身の制作について、「異なる形や素材を接続し、その境界を曖昧にしていくこと自体が、自身にとっての『NO BORDER』だ」と説明します。まったく異なる素材同士を彫刻によってつなぎ合わせ、新たなひとつの存在へと変えていく制作プロセスと、異なる人、ジャンル、文化をつないできたスカパラの思想を重ね合わせました。

さらに、メンバーが実際に使用していたスティックやスネアのヘッドなどを用いた《Synthesizer #2601》も制作。従来の作品では素材を白く塗ることで形そのものを際立たせてきた大野だが、今回は「生々しさ」を残すため素材そのものにはほとんど手を加えず、それらを接続するジョイント部分のみを彫刻しています。

作品には約20個の振動センサーとオシロスコープを搭載。長年スカパラの音楽を直に浴びてきた機材が、会場の音や振動を受けてどのように反応するのかを可視化します。「スカパラと機材、そして作品を見る人との接点そのものを可視化する」インスタレーションとして、来場者も作品の循環の一部となる体験を生み出しています。

vug ー「話し合うこと」から描く、平和とLOVE

vug
左から《LOVE》、《tondeke》、《minna》

ペインティングを中心にジャンルを横断した表現活動を展開するvugは、自身が日常的に描いてきた「LOVE」と、今回提示された「平和」というテーマを接続して作品を制作しています。

そのなかの一作は、東京スカパラダイスオーケストラが何かを決める際に「みんなで話し合って決める」というエピソードから着想。「ああでもない、こうでもない」とメンバーが集まり対話する姿を、vug自身が「民主主義的」と感じたことから、複数の人物が寄り合う光景として描き出しました。

また、地球の上を歩きながら「LOVE」を叫ぶ人物や、芝生の上で人々が空に浮かぶ風船を眺める風景など、平和や愛をユーモアと無邪気さをもって描いた作品を発表。会場の壁画にも多くの人物が集まり“わちゃわちゃ”と共存する様子を描き、スカパラという共同体が持つ賑やかさや祝祭性を、独自の視点で表現しています。

小林健太ー写真とデジタル表現で、スカパラの「グルーヴ」を描く

小林健太
NO BORDER (Orange) #smudge

写真家・アーティストとして活動する小林健太は、デジタル写真の色情報を引き伸ばし、絵の具のストロークのように変形させる代表的な表現技法「スマッジ」を用いて、新作を制作しました。

今回素材となったのは、写真家・JULENが2023年の東京スカパラダイスオーケストラ ニューヨーク公演で撮影したライブ写真。複数の写真をコラージュし、その上にスマッジによるストロークを重ねることで、静止したライブ写真の中に音楽の動きや身体性を立ち上げました。

小林は、昨年開催された「MEET YOUR ART FESTIVAL」において、GAMOプロデュースの特別編成ライブ「Experimental Session produced by GAMO」でコラボレーションした経験にも言及。電子的・デジタルな表現がスカとどのように混ざり合うのか、当初は「どうなるんだろう」という感覚があったというが、実際のセッションを通して、異なる表現を受け入れるスカパラの音楽性の奥深さとコラボレーションの幅を実感したと振り返りました。

今回の作品では、ライブ写真にもともと写り込んでいた蛍光色を大胆に広げながら、そのときに体感したスカパラの「グルーヴ」を小林自身のデジタル表現へと置き換えています。


インタビューと一次資料から、37年前の時間へアクセスする「リサーチエリア」

Photo by Keizo Kioku

会場奥のリサーチエリアでは、メンバーそれぞれが語る「Paradise Has No Border」の瞬間を収めたインタビュー映像を公開。映像とあわせて、そこで語られた出来事へ実際にアクセスするための一次資料や書籍、雑誌などを展示しています。

なかでも、1998年から2003年まで東京スカパラダイスオーケストラが主宰・企画した『JUSTA MAGAZINE』は、本展における重要なアーカイブのひとつ。島影は、同誌について「自主的でDIY的な活動の精神性が織り込まれていると同時に、国内のスカ・シーンを盛り上げていく役割を担った重要なメディア」と解説します。

そのほか、メンバーがインタビューで語った海外公演のセットリストや、当時の活動を記録した雑誌などもリサーチによって発掘。インタビューで語られる記憶と、その瞬間を記録した一次資料を行き来しながら、当時の時間や空気へアクセスできる構成となっています。

また、インタビューのなかで島影自身が「泣きそうになったり、爆笑したりした」というメンバーの言葉の数々も、詩的なテキストとして空間に配置。歴史的事実だけでなく、37年間の活動の中で紡がれてきた感情や記憶まで含めて展示しています。


東京スカパラダイスオーケストラが語る、37年と「Paradise Has No Border」

展示を鑑賞したメンバーからも、それぞれの視点で作品や37年間の活動について言葉が寄せられました。

谷中敦

「垣根のない活動を自分たちもしていくし、みんなもそうあってほしい。僕らは音楽をやっていることで、たくさんの人の笑顔を間近に感じられる職業なので、『世界中がこんなふうにニコニコしていたら本当に平和だよな』ということをずっと思っています。そういうお客さんの笑顔をエネルギーにして、また音楽を作る。それを繰り返してきました。そういう気持ちを汲んで、これだけ多くの方々に作品を作っていただいたことが本当にうれしいです。幸せでしかないです。」

GAMO

「このように深く我々のことを掘り下げていただいて、本当にありがとうございます。37年、自分たちだけではなく、本当に多くの方々のお力をいただいて今に至っていると思います。『動的平衡』という言葉がありますが、まさに僕らも、お客さんだったり、ほかのアーティストだったり、いろいろな方々の力を借りながら、常に新しいところへ向かってきた。気がつけば37年ですが、これからも常にちょっとずつ進化して、皆さんと面白いことを体感できるようなことをやっていけたらと思っています。」

大森はじめ

「僕たちは音楽が大好きで音楽をやっていますが、その楽しさを皆さんに伝えて、それぞれにいろいろな感情を持ってもらえたらすごくうれしい。それが平和や愛につながってくれたらいいなという思いも持ちながら演奏しています。今回、僕たちの音楽を感じて、それを作品という形で表現してくださったことが本当にうれしいです。目に見える形になったことで、僕らにもその思いがひしひしと伝わってきました。」

NARGO

「37年やってきて、最初はまだ日本ではほとんど知られていなかったスカという音楽を始めました。気がつけば、自分たちでも計り知れないようなエネルギーを感じながら、いつの間にか僕らなりの“東京スカ”が出来上がっていたんです。バンドにはいろいろなことがありました。人が辞めたり、亡くなったり。そのたびに自分たちで再生して、蘇って、違う生き物として生まれ変わってきたような気がします。そのエネルギーが地球の反対側まで届いて、メキシコでスカパラブームが起きたり、今度はこうしてアートにまでつながっていく。長くやっていると、いいことがあるなと本当に思います。作品を作ってくださった皆さんに、心から感謝しています。」

川上つよし

「以前は『音楽で平和を』というと、少し大げさすぎるように感じていました。もちろん、初めて楽器を持った頃にそんなことは全く考えていなかったので、簡単には言えないと思っていたんです。でも、最近の演奏や出会いを通して、本当に音楽は平和につながるんじゃないかと思うようになりました。37年やっていても、こうして自分たちの心境はどんどん変わっていくんだなと感じています。スカパラは、出来上がったものを一方的に発信し続けるのではなく、刻一刻と変わり続けているバンドです。今回、アーティストの皆さんが、そんな僕らにそれぞれ違う角度から光を当ててくださったことを、本当にありがたく思っています。」


本展では、アート、リサーチ、アーカイブという複数の視点を往還しながら、東京スカパラダイスオーケストラという“生命体”が37年間にわたり更新し続けてきた「NO BORDER」の思想を体感することができます。

会場では、本展限定のフード&ドリンクに加え、「Paradise Has No Border」の世界観をもとに、大森はじめ、谷中敦、川上つよしがそれぞれセレクトした「NO BORDER」プレイリストを会場BGMとして展開。作品やリサーチ展示、アーカイブ、音楽、飲食までを含めた空間全体を通して、「Paradise Has No Border」という思想を体験する展覧会となっています。

また、会場となるWALL_alternativeは、建築家ナイジェル・コーツが手がけた築37年の建築を活用したアートスペースです。東京スカパラダイスオーケストラと同じく37年という時間を刻んできた建築で開催されることも、本展ならではの象徴的な要素となっています。


開催概要「 TOKYO SKA HAS NO BORDER」

会期:2026年8月11日(火)~8月29日(土)※会期中無休

会場: WALL_alternative(東京都港区西麻布4-2-4 1F)

営業時間:

 土・日 16:00~24:00

 月~金・祝日 18:00~24:00

※会場では「NO BORDER」プレイリストをBGMとして放送(一部時間帯を除く)

入場料: 入場無料

※ワンドリンク制

※優先入場時間は事前予約制

※詳細は特設サイトをご確認ください。

主催:エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社

企画:エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社/島影圭佑

公式サイト: https://avex.jp/wall/exhibition/863