「トワイライト、新版画」展×短歌 吟行会実施「トワイライト」を詠む

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三菱一号館美術館(東京・丸の内)にて開催中の「トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで」(以下「トワイライト、新版画」)において、歌人の穂村弘さんをホスト役として、岡野大嗣さん、岡本真帆さん、小原奈美さんをお迎えし「吟行会※1」を実施しました。その様子を収録したリーフレット〈「新しい私 書店※2」通信〉の配布および当館WEBサイトでの公開が決定いたしましたので、お知らせいたします。

本企画を収録した、「新しい私 書店」通信は、丸善 丸の内本店、TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI、紀伊國屋書店 大手町ビル店、銀座 蔦屋書店、紀伊國屋書店 新宿本店、くまざわ書店 浅草店、東京堂書店 神田神保町店と丸の内エリアのラック等で4月下旬より順次配布予定です。

「トワイライト」を詠む ―「新版画×短歌」吟行会の実施—

本展覧会では、風景や日常の営みを詠むことも多い「短歌」と「風景版画」に共通点を見出し、「短歌」をフックとして展覧会に興味をもっていただけないかと考えました。穂村弘さんのご協力により、本コラボレーションが実現しました。

四名の歌人(穂村弘さん、岡野大嗣さん、岡本真帆さん、小原奈実さん)が「トワイライト、新版画」展を鑑賞し、各自一首ずつ歌を詠んでいただくという試みを通して、展覧会の新しい楽しみ方をご提案いたします。

写真:エントランスの立体ロゴの前で。左から岡本真帆さん、穂村弘さん、小原奈実さん、岡野大嗣さん。

※1:歌を作るために戸外に出かける「吟行(ぎんこう)」と「句会」を組み合わせたもの。名所、公園、寺社などの戸外へ出かけ、その場で実際に目にした景色を元に作品を作り、その後、参加者で歌を披露・講評や鑑賞を行う。

 

「新しい私 書店」通信

本企画を特集した「新しい私 書店」通信(7号)での掲載に加えて、当館のWEBサイトで鑑賞の様子や吟行会の詳細も公開いたします。

三菱一号館美術館WEBサイトにて2026年4月27日(月)に公開:https://mimt.jp/blog/official/19355※3

※2:「新しい私 書店」とは、三菱一号館美術館のブランドスローガン「新しい私に出会う、三菱一号館美術館」をコンセプト にして生まれた架空書店サイトです。「新しい私に出会う」きっかけとなる本をご紹介しています。「新しい私 書店」通信は、このコンセプトに沿ったテーマを設定しお届けしています。本号は展覧会とのタイアップ企画をお届けします。

※3:吟行会の詳細は2026年4月27日(月)に当館のブログページにて公開いたします。               

吟行会に参加した感想・本展へのメッセージ

本企画に参加した感想や展覧会のコメントを寄せてくださいましたので、ご紹介いたします。

吟行会での展覧会鑑賞の様子

■穂村弘さん

時代の移り変わりを画面の中に写しとった版画の、写真とはまた違ったリアルさに強い印象を受けました。特に小林清親の「光線画」について、描写の精密さとそこに込められた感情の濃度に惹かれました。ときめきや切なさが時間を超えて伝わってくることに驚きを感じました。この特別な「目」の持ち主に現在の東京を見てもらいたいです。そこからどんな「光線画」が生み出されるのか。

 

■岡野大嗣さん

小林清親の《御厩橋之図》に描かれた雷光は、一瞬だけ世界を裂いて消える。その光を紙の上に留めようとする作者の執念が、刷り上がった画のなかでまだ発熱しているようだった。《新橋ステンション》にも惹かれる。駅舎の窓からこぼれるわずかな灯りが闇の深さを際立たせ、その深い闇がまた、濡れた路面に散るかすかな光をいっそう鮮やかに浮かび上がらせている。光と闇が互いを必要としながら、一枚の紙の上でせめぎ合っていた。

版画は一枚の版から何度も刷られる。同じ図でありながら、摺師の手の圧や加減しだいで一枚ごとに色の表情が変わる。ショート動画が数秒の映像をループ再生するように、版画もまた一回きりの光をくり返し現在に呼び戻す。反復のなかでこそ、一瞬のひりつきはかえって深まるのだと思う。

同行した歌人たちが作品に見入る横顔を眺めていると、一瞬の光を紙の上に留めようとした作者たちの仕事と、同じ構図のなかにいるような気がした。

 

■岡本真帆さん

美術館で吟行をするのは初めての経験でした。展示を見たあと、一緒に行った人と感想を言い合うことは以前にもありましたが、感じたことを短歌にして、その歌について評をし合うのは、展示そのものが自分の体験と混ざり合い、より深く馴染んでいくような感覚がありました。

鑑賞中は「一つだけ絵を持ち帰れるとしたら」という見方もしてみたのですが、私は小林清親の《御廐橋之図》に強く惹かれました。雷が駆ける一瞬を捉えた作品です。空は分厚い雲に覆われ、海も暗く、画面の大部分を黒が占める中、中央に描かれた稲妻が雲間を割り広げるように強く光っています。その力強さがとてもかっこよく、同時に、稲妻を縁取る桃色のグラデーションにも静かな美しさを感じました。

 

■小原奈美さん

浮世絵の衰退期に「光線画」というジャンルが生み出されていたこと自体、今回の展覧会で初めて知りました。雨水の溜まった道の淡い反射、水面にゆらめく月影、当時新しかったであろうガス灯の光など、版画だから色数も限られるはずなのに、どれも情感に満ちていて魅力的でした。

その浮世絵の流れを汲んで新版画が制作された背景として、海外からの需要があったという解説も興味深かったです。たとえば私が巴水の描いた風景に癒されるのも、海外から日本に向けられた異国趣味的視線や、急速に近代化していた日本国内で過去に向けられた懐古趣味的視線と重なる部分があると考えると、当時の人々を少し身近に感じられます。版画は美術品のなかでも比較的「手に入れられる」要素が強いものなので、人々の欲望を反映しやすいのかもしれないと思いました。

 

【ゲストプロフィール】

・穂村弘

歌人。著書に『シンジケート』『ラインマーカーズ』『水中翼船炎上中』『短歌の友人』『世界音痴』『蛸足ノート』など。伊藤整文学賞、講談社エッセイ賞、若山牧水賞、アルスエレクトロニカ栄誉賞他を受賞。

・岡野大嗣

1980年大阪生まれ。歌人。2014年に第1歌集『サイレンと犀』でデビュー。近刊に『夜なのに夜みたい』『ユニバーサリー・アニバーサリー』。その他著作多数。

・岡本真帆

1989年生まれ。高知県出身。2022年に第一歌集『水上バス浅草行き』(ナナロク社)を刊行。その他の著書に歌集『あかるい花束』(ナナロク社)、『落雷と祝福「好き」に生かされる短歌とエッセイ』(朝日新聞出版)など。

・小原奈美

1991年 東京生まれ。2010年 第56回角川短歌賞次席。東大本郷短歌会、同人誌「穀物」などに参加。歌集に『声影記』(港の人、2025)。

【「トワイライト、新版画」ブックフェア実施・印刷物配布店舗情報】

紀伊國屋書店 新宿本店

紀伊國屋書店 新宿本店

所 在 地:東京都新宿区新宿3-17-7

サ イ ト:https://store.kinokuniya.co.jp/store/shinjuku-main-store/

昭和2年の創業以来、情報と文化の発信地として、新宿の地で長く愛される大型総合書店。書籍・専門書・洋書・コミックのほか、DVD・グッズまで豊富な品揃え。新宿駅東口徒歩3分。紀伊國屋ビルディングは1964年に完成、2017年には東京都の「歴史的建造物」に選定されました。

TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI

TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI

所 在 地:東京都千代田区丸の内2-4-1 丸ビル 3F・4F
サ イ ト:https://www.sharelounge.jp/store/2046

居心地の良い空間で、プレゼントにもぴったりな「お気に入り」の本や雑貨、最新の情報が見つかる生活提案型書店を目指しております。

また「SHARE LOUNGE」も併設。東京駅を一望でき、集中できるワークスペース以外にもカフェ・バーとしても利用可能。買い物中や仕事終わりのくつろぎの場、今回の展覧会のアフタートークの場としてもご利用ください。

銀座 蔦屋書店

銀座 蔦屋書店

所 在 地:東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 6F
サ イ ト:https://store.tsite.jp/ginza/

本を介してアートと日本文化と暮らしをつなぎ、「アートのある暮らし」を提案します。アートを眺めながら、またアートブックをひらきながら、知的好奇心やアートへの情熱とともに、珈琲を飲むことができるカフェやギャラリーも併設。思い思いにアートを楽しむ時間を過ごせる環境をご用意しています。

丸善 丸の内本店

丸善 丸の内本店

所 在 地:東京都千代田区丸の内1-6-4 丸の内オアゾ1F~4F
サ イ ト:https://honto.jp/store/detail_1572000_14HB310.html

「Book Museum」をコンセプトにした、日本最大級の総合書店。お客様と本を結ぶための機能が充実。

紀伊國屋書店 大手町ビル店

紀伊國屋書店 大手町ビル店

所 在 地:東京都 千代田区 大手町1-6-1 大手町ビル 1F
サ イ ト:https://store.kinokuniya.co.jp/store/otemachi-building-store/

大手町駅直結の1958年から続く老舗の書店です。2025年にリニューアルオープンし、コンパクトながらも、経営・会計・法律・金融などの専門性の高いビジネス書を中心に、ビジネスパーソンの皆さまの知的好奇心を満たす品揃えで忙しい仕事の合間に「ほっとできる」ひとときを提供いたします。

くまざわ書店 浅草店

くまざわ書店 浅草店

所 在 地:東京都台東区花川戸1-4-1 EKIMISE 4F
サ イ ト: https://www.kumabook.com/shop/asakusa/

地元・浅草ならではの書籍を中心に、売場を拡大したコミックと新規扱いとなるアニメグッズ等、幅広い品揃えで皆様をお待ちしております。

東京堂書店 神田神保町店

 東京堂書店 神田神保町店

所 在 地:東京都千代田区神田神保町1-17

サ イ ト:http://www.tokyodo-web.co.jp/

神田神保町のすずらん通りに店を構える創業135年の老舗新刊書店。3階層の売場に豊富な書籍・雑誌を揃える。1階レジ前のこだわりの平台「知の泉」には、人文・文芸書を中心にジャンル担当者が厳選した新刊や話題書が並び、その特徴的な形から「軍艦」とも呼ばれている。

※各種ツールの配布状況は各店舗にお問い合わせください。


【参考情報1】穂村弘さんセレクト、「黄昏時」を詠んだ歌のしおりを配布中

穂村弘さんに、本展の出品作品と同時代に黄昏時を詠んだ短歌を選定いただき、その歌を記したオリジナルのしおりを作成しました。書店等で配布中です。

4色揃うとトワイライトなグラデーションが楽しめます。短歌を通して当時の情景を想像できる企画です。

※無くなり次第終了。

しおり

【参考情報2】「トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで」                

ポスタービジュアル

最後の浮世絵師のひとりと呼ばれる小林清親が1876(明治9)年に開始した『東京名所図』は、明治期の風景版画へ大きな変革をもたらしました。彼の描いた「光線画」は、光と深い陰影により江戸の情緒まで捉えています。

明治末期に浮世絵復興を目指した新版画は、その技術ばかりでなく清親らが画面に留めた情趣を引き継いで、新しい日本の風景を発見しようとしました。清親から吉田博・川瀬巴水らに至る風景版画の流れを、国立アジア美術館のミュラー・コレクションによって辿ります。

■会  期:2026年2月19日(木) – 2026年5月24日(日)

■休 館 日:祝日・振休を除く月曜日 但し、トークフリーデー[4/27]、5/18は開館

■開館時間:10:00-18:00 (祝日除く金曜日、第二水曜日、会期最終週平日は20時まで)

※入館は閉館の30分前まで

■観 覧 料:一般 2,300円 大学生1,300円、高校生 1,000円 中学生以下 無料

                


【参考情報3】三菱一号館美術館

三菱一号館美術館 外観

2010年、東京・丸の内に開館。JR東京駅徒歩5分。

19世紀後半から20世紀前半の近代美術を主題とする企画展を年3回開催。また、当館所蔵作品を中心に、学芸員の興味関心に基づく小企画展を年3回企画展と同時開催。赤煉瓦の建物は、三菱が1894年に建設した「三菱一号館」(ジョサイア・コンドル設計)を復元したもの。