都市のヴィジョン─Obayashi Foundation Research Program 第5回助成対象者 ホー・ルイ・アン 新作レクチャーパフォーマンス(プロトタイプ)を4月4日に開催!

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(Artist) Ogata Gekko; Japan; May 28, 1895; Woodblock print; ink and color on paper; H x W (image): 36.3 x 71.5 cm (14 5/16 x 28 1/8 in); Gift--the Elizabeth D. Woodbury collection of prints from Meiji Japan

作品タイトルは『The Price of Gold 』                           ──金(ゴールド)、貨幣、国家─近代日本が辿った変容から都市を読み解く──

日清両国之大官全公命能結平和之局(にっしんりょうこくのたいかんこうめいをまっとうしてよくへいわのきょくをむすぶ)尾形月耕 明治28年/1895年 Courtesy of the National Museum of Asian Art, Washington, DC.

この度、公益財団法人大林財団の制作助成事業《都市のヴィジョン─Obayashi Foundation Research Program》第5 回助成対象者であるシンガポール出身のアーティスト、ホー・ルイ・アンのプロジェクト詳細が決定いたしました。

本事業は、「都市」を表現のテーマにする国内外のアーティストの活動支援をすることで、従来の都市計画とは異なる、アーティストのユニークな発想で新しい都市像を提示する機会を促すもので、世界にも類をみない特徴的なプログラムです。

現代美術、映画、パフォーマンス、理論など複数の領域を横断的に活動してきたホー・ルイ・アンは、これまでアジアの経済史、植民地主義、グローバル資本主義をめぐるナラティブを批判的に読み替え、イメージと権力の関係を問う作品を発表してきました。

本事業では、ホーが今後数年にわたって制作予定の、東・東南アジアの主要な商業・金融ハブを起点に過去一世紀のグローバル経済史を再解釈するプロジェクトとして、日本を扱う章のリサーチを実施しました。

本リサーチでは、商品としての「金」に着目し、1897年の日本の金本位制※1 を起点とする1890~1940年代の日本の金融史の調査のために、東京、大阪、佐渡などを訪れ、文献調査に加え、歴史資料、アーカイブ映像、近代産業遺産の調査を行いました。また、同時代に発展した日本の無声映画にも注目し、金本位制に関連して政府が展開した公共キャンペーンや倹約啓発映画を通して、文化芸術や視覚表現がいかに権力と結びつき、利用されてきたのかを検証し、当時登場し始めた活弁士の果たした役割にも焦点を当て調査を進めています。

複数の地域を横断しながら行われるホーの実践は、歴史・金融・文化芸術が複雑に織りなすネットワークとして都市を捉え直し、その構造が私たちの現代都市とどのように深く接続しているのかを想像させる試みといえます。

これらのリサーチの成果として、2026年4月4日(土)に日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール(大ホール)にてレクチャー・スクリーニング※ 2「The Price of Gold」を開催いたします。各地で撮影した映像や収集したアーカイブ資料、実存する映画作品をもとに、既存の歴史的ナラティブが、ホーの視点によってどのように読み替えられ、語り直されるのか、ご注目ください。

※1 金を通貨の価値基準とする仕組みで、1816年に英国で制度化され、19世紀から20世紀初頭にかけて世界に広まった。各国の中央銀行は発行した紙幣と同額の金を保有し、相互の交換を保証した。1929年の世界恐慌以降、相次いで廃止され、管理通貨制度へと移行した。

※2 レクチャー・スクリーニング:映像やレクチャーを複合的に組み合わせたパフォーマンス作品です。

プロジェクト概要

タイトル:ホー・ルイ・アン「The Price of Gold」

レクチャー・スクリーニング

日時:2026 年4月4日(土) 15:00 ─ 17:00 (開場 14:30)

※主催者挨拶およびポストトーク含む

会場:日比谷コンベンションホール(大ホール)

入場料:無料

参加方法:要予約。2026 年3月上旬より、大林財団ウェブサイトより事前予約の受付を開始する予定です。

記録冊子

2026年12月完成予定です。

レクチャー・スクリーニングについて ホー・ルイ・アン

本レクチャー・スクリーニングにおいて、1897年から1931年にかけての日本における金本位制の採用と、その後の停止、復帰、そして放棄に至る、短くも重大な影響を及ぼした歴史に関する継続的なリサーチの一部を提示する。日露戦争と第一次世界大戦の間に位置するこの時代は、経済的コスモポリタニズム(世界主義)と経済的ナショナリズムの国際的な対立に加え、反帝国主義運動の台頭によって特徴づけられる。これらの勢力は、日本の経済政策や、当時形成されつつあった国際金融秩序における日本の地位に、重要な影響を与えた。

出発点となるのは、日清戦争の敗北後に清から日本へ支払われた巨額の賠償金である。ロンドンを経由して英ポンドで支払われ、金への直接交換が可能であったこの資金は、日本の金本位制移行がいかに特異なものであったかを浮き彫りにする。すなわち、中国から徴収したこれらの資金が、日本が「自由主義的」な西洋型の金本位制諸国の列に加わることを大きく後押ししたのである。金本位制を支持するリベラル派と、国家主導の産業政策を主張する陣営との間の緊張は戦間期まで続いた。この時期、金本位制は単なる経済的手段としてだけでなく、一種の道徳的プロジェクトとしても推進され、過度な消費を抑制し貴重な金準備の流出を防ぐための国民運動が全国で展開された。本レクチャー・スクリーニングでは、こうした運動の中で制作・流布された映画の抜粋を上映し、ライブ・ナレーションを通してそれらを現代の視点から読み替える。

その断片を繋ぎ合わせることで、金、貨幣、そして国家を巡って変容する社会の構造、認識を露わにする。それは1930年代後半、日本を西洋から「脱却」させ、東アジアにおける覇権を巡る闘争へと駆り立てていった思想の変遷を浮き彫りにする試みでもある。

2025年12月 ホー・ルイ・アン

リサーチで訪れた佐渡金山(2025)Courtesy of the artist
リサーチ風景:佐渡金山
リサーチ風景:2025 大阪・関西万博
リサーチ風景:太陽の塔

ホー・ルイ・アン(HO Rui An)略歴

現代美術、映画、パフォーマンス、理論の交錯点で活動するアーティスト兼ライター。

レクチャーやエッセイ、映画などを通してグローバル時代のさまざまな統治システム下での労働、テクノロジー、資本の関係性を探求しています。

主な展覧会やプロジェクト

「上海ビエンナーレ」(2023)

「バンコク・アート・ビエンナーレ」(2020)

「光州ビエンナーレ」(2018)

「ジャカルタ・ビエンナーレ」(2017)

「シャルジャ・ビエンナーレ13」(2017)

「コチ・ムジリス・ビエンナーレ」(2014)

ナショナル・ギャラリー・シンガポール(2022)

クンストハレ・ウィーン(2021)

山口情報芸術センター[YCAM](2018)

ハオス・デア・クルトゥーレン・デア・ヴェルト(ベルリン、2017)

など多数

参考画像

《A Petropolis in a Garden with a Long View》(2024)Courtesy of A+ Works of Art, Photo: Quinn Lum
《Figures of History and the Grounds of Intelligence》(2024)Courtesy of A+ Works of Art, Photo: Quinn Lum
《24 Cinematic Points of View of a Factory Gate in China》(2023) Courtesy of the artist
《Student Bodies》(2019)Courtesy of the artist

委員長コメント

2017年に大林財団が創設した《都市のヴィジョン−Obayashi Foundation Research Program》は、アーティストに都市のあり方を調査・研究・提案していただく機会を提供する助成です。これまでの採択者にはそれぞれ豊かな作家活動を積み重ねてきた実績のもと、本助成の趣旨について独自の解釈の上、「都市」に対する新たな視点を示していただきました。

第5回となる今回の推薦・選考では、パンデミック後ということもあり、日本のみならず世界各地を拠点にするアーティストが多数候補に挙がりました。世界各地で紛争や災害、格差問題が噴出している状況は、都市をテーマとした本助成の作家選考に少なからぬ影響を及ぼしたと思います。加えて、候補となったアーティストにはファッションやストリートカルチャー、SNS、パフォーマンスに軸を置き、狭義の美術の枠に収まらない制作・活動で知られる作家が含まれたことも、今回の推薦・選考の特徴のひとつでした。

慎重な議論を重ねた結果、このたびの助成対象者にはシンガポール出身のホー・ルイ・アン氏を選出しました。グローバル資本主義システムに対する批評的な視点にもとづいて歴史資料をはじめ現代の文化的資料を幅広く調査し、東アジアおよび東南アジアにおける資本主義経済の成り立ちと現代の様相——西洋の影響が根深く関わっていることは言うまでもありません——をレクチャー・パフォーマンスや映像の形式で発表する作品で知られています。「金(ゴールド)」を基軸に東アジアおよび東南アジア地域を展望し、歴史的な条件が現代の国家と市場メカニズムに与える影響を研究・考察するホーの視点は、「メタ市場」という都市を形づくる重要かつ見えない基盤を浮かび上がらせるものです。アーティストならではのナラティヴによって、今回の研究が都市と現代社会にどのような光を当ててくれるのか。これまでの採択者のなかでもっとも若い世代のアーティストからの新鮮な提言に期待を寄せています。

野村しのぶ

推薦選考委員

選考委員長:野村しのぶ 東京オペラシティアートギャラリー シニア・キュレーター

選考副委員長:保坂 健二朗 滋賀県立美術館 ディレクター(館長)

選考委員:飯田 志保子 キュレーター/大坂 紘一郎 アサクサ 代表/藪前 知子 東京都現代美術館 学芸員

《都市のヴィジョン— Obayashi Foundation Research Program》について

アーティストが「都市」をテーマに研究・考察する活動を支援する目的で、2年ごとに実施される大林財団による制作助成事業です。2017年度にスタートし、今回で5回目を迎えました。

この助成事業は、豊かで自由な発想を持ち、さらに都市のあり方に強い興味を持つ国内外のアーティストを対象としており、5人の推薦選考委員の推薦に基づいて決定されます。助成対象者には、従来の都市計画とは異なる独自の視点から、都市におけるさまざまな問題の研究・考察をし、住んでみたい都市や、新しい、あるいは理想の都市のあり方を提案・提言していただきます。

アーティストの提案は展覧会、トークイベント、パフォーマンスなどその回にあわせた様々な形態で成果発表をするほか、記録冊子(部数限定)を発行しています。

《都市のヴィジョン— Obayashi Foundation Research Program》および過去実績について


参考資料:過去の採択者について

第1回(2017年度)会田誠

[展覧会]「GROUND NO PLAN」

[アーカイブ]https://www.obayashifoundation.org/urbanvision/event/2017_aidamakoto/

第2回(2019年度)Theaster Gates(シアスター・ゲイツ)

[プレゼンテーション]「To Be A Maker: Finding Afro-Mingei 作り手になること―アフロ民藝を求めて」

[記録集]『ECONOMIES OF MINGEI』

[アーカイブ]https://www.obayashifoundation.org/urbanvision/profile/2019_theaster_gates.php#pager01

第3回(2021年度)exonemo(エキソニモ)

[記録集]『Infected Cities』

[アーカイブ]https://www.obayashifoundation.org/urbanvision/profile/2021_exonemo.php

第4回(2023年度)イム・ミヌク

[展覧会]「Hyper Yellow」

[パフォーマンス]「S.O.S- 走れ神々」

[トークイベント]
[記録集]『Hyper Yellow』

[アーカイブ]https://www.obayashifoundation.org/urbanvision/profile/2023_minouk_lim.php#pager01

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