舘鼻則孝は、KOSAKU KANECHIKA 天王洲と京橋の2拠点で個展を同時開催。天王洲では、日本文化に根差す工芸的な作品、京橋では舘鼻のパーソナルな側面から生み出される油彩画やドローイングを披露。

舘鼻則孝 個展「Obsession」
2025年10月11日(土)– 11月22日(土)
KOSAKU KANECHIKA Kyobashi | TODA BUILDING
この度、舘鼻則孝は2025年10月11日(土)より11月22日(土)まで、新作個展「Obsession」をKOSAKU KANECHIKA 京橋にて開催いたします。
「Obsession」展では、スタジオでの組織的な創作活動とは対照的に、舘鼻自身が絵筆を手にして制作した肉筆画のみを展示公開します。大学卒業以来の15年間にわたる作家活動を経て、最もプリミティブな美術との向き合い方に立ち返ることで、自身の歩みや表現の根源を見つめ直す機会となっています。
天王洲で開催されている「Sacred Reflections」展の工房制での創作が、文化や伝統の継承に焦点を当てた作品であるのに対し、「Obsession」展は舘鼻自身の内面や個人的な記憶に向き合った創作を通して、対照的な視点から作家の軌跡と精神性を伝える展覧会となっています。
舘鼻則孝は本展に際し、以下のように語っています。
私の活動は、自分が想像した以上に大きな広がりを持ち、社会的な意義を帯びるようになり、個人の枠を超えた意味を持つようになりました。しかし同時に、個としての価値観や美意識を見失いそうになる瞬間も幾度となく訪れました。
そんな中で、ひとりの作家として、自分自身と向き合いながら手を動かして作品を生み出すことが心の均衡を保つ唯一の方法であると感じました。
筆を通じて生まれる線や色彩には、思考や感情の揺らぎ、葛藤や迷い、微かな喜びまでもが表れます。描く行為そのものが、過去と現在、内面と外界との対話であり、心の奥にある記憶や感覚を可視化することにつながっています。


Portrait (Blue Period), 2025
Oil on canvas
162.0 x 130.0 cm
本作は、舘鼻則孝が自身のパートナーを描いた肖像画です。イメージのもとになっているのは、舘鼻本人が撮影した彼女の誕生日の写真です。青い色調が特徴的な本作は、パブロ・ピカソの「青の時代」を代表する20歳の自画像《Self-Portrait, 1901》を参照し構築されました。青い色調は、被写体の穏やかな表情を際立たせるとともに、作家自身の心情や過去の時間の記憶を映し出しています。


Self-Portrait, 2025
Oil on canvas
162.0 x 130.0 cm
自画像は、絵画史の中でも作家が避けては通れない主題のひとつです。舘鼻則孝がこれまでに公開している自画像は、2010年に東京藝術大学の卒業制作として描かれた1点のみであり、本作はそれ以来に制作された2点の自画像のうち、最も新しい作品となります。
本作のイメージは、自画像を描く当日の朝に舘鼻のパートナーが撮影した写真をもとに構築されています。展覧会の会場では、パートナーを描いた肖像画と向かい合う形で展示されており、ふたりの繋がりや対話を感じさせる内容となっています。


Mother and Child, 2025
Pastel on canvas
162.0 x 130.0 cm
本作は、ルネサンス期の宗教画における象徴的な主題《Madonna and Child》から着想を得て描かれた作品です。特に、レオナルド・ダ・ヴィンチの《Madonna and Child with St Anne and the Young St John》を参照しながら構成されています。
何気ない家族の写真がもとになっていますが、その構図には「聖母子像」のイメージが見立てられています。また、撮影者が舘鼻本人であることを考慮すると、被写体となっている三人の家族の対面には、撮影者であり作者自身の存在が暗示されており、それもまた絵画の構成要素のひとつとなっています。
舘鼻則孝は、東京藝術大学在学中にも複数のパステルドローイングを制作していましたが、それらはこれまで公開されていませんでした。本作は、パステルドローイングの中でも最も新しく、かつ最も大きな作品となっています。


Self-Portrait, 2025
Oil on canvas
53.0 x 45.5 cm
本作は、2015年に発表された舘鼻則孝の作品シリーズ《Traces of a Continuing History》を起点として制作された自画像です。同シリーズは、作家自身の骸骨をモチーフに金属彫刻として表現した作品群であり、先進的な技法を用いて自身の骨格データを抽出して制作されました。
その延長線上に位置づけられる本作でも、描かれている頭蓋骨は博物館で見られるような他者のものではなく、作家自身の頭蓋骨が描かれています。


Bed head, 2025
Oil on canvas
116.7 x 91.0 cm


Blue in Red, 2025
Oil on canvas
91.0 x 72.6 cm
本展では、舘鼻則孝によって描かれた子供たちを被写体とする作品が複数点公開されています。これらの作品は、日常の何気ないひとコマを作家独自の視点で切り取り、そのイメージをもとに構築されています。舘鼻は、日常を記録する写真の中には、写真作品としては選ばれないような瞬間であっても、絵画のモチーフとして見ると強い魅力を持つものがあると語っています。


Falling Camellia, 2025
Oil on canvas
53.0 x 45.5 cm
( Photo on the left )
本作は、2017年に発表された《Camellia Fields》に連なる絵画作品です。幼少期を過ごした鎌倉の椿をモチーフに、日本独自の死生観を重ね合わせたブロンズ彫刻《Camellia Fields》の世界観を、絵画という新たな形式で展開しています。静的な彫刻作品に対し、本作では椿が落ちる瞬間を描くことで、動的な時間の流れを捉えています。本展では、《Camellia Fields》と並置して展示されており、静と動の対比が際立つ構成となっています。

開催概要
展覧会名
舘鼻則孝 「Obsession」
展覧会会期
2025年10月11日(土) – 11月22日(土)
開廊時間
11:00 – 19:00
日・月・祝は休廊
会場
KOSAKU KANECHIKA
〒104-0031
東京都中央区京橋1-7-1
TODA BUILDING 3F
03-3528-6720
https://kosakukanechika.com
入場無料
アーティストプロフィール

舘鼻則孝(たてはな のりたか)
1985年、東京都生まれ。歌舞伎町で銭湯「歌舞伎湯」を営む家系に生まれ鎌倉で育つ。シュタイナー教育に基づく人形作家である母の影響で、幼少期から手でものをつくることを覚える。2010年に東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻を卒業。遊女に関する文化研究とともに、友禅染を用いた着物や下駄の制作をする。「Future Beauty」(東京都現代美術館など国際巡回、2012)、「イメージメーカー展」(21_21 DESIGN SIGHT、2014)、個展「呪力の美学」(岡本太郎記念館、2016)、個展「It’s always the others who die」(POLA Museum Annex、2019)、個展「NORITAKA TATEHANA: Refashioning Beauty」(ポートランド日本庭園、2019)、「和巧絶佳」(パナソニック汐留美術館など4会場を巡回、2020-22)、個展「Distance」(山口県立萩美術館・浦上記念館、2023) 等の他、ニューヨーク、パリ、ベルギーなど世界各地で作品を発表。2016年3月にパリのカルティエ現代美術財団で文楽公演を開催など、幅広い活動を展開している。作品はメトロポリタン美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館などに収蔵されている。また、東京都が主宰する「江戸東京きらりプロジェクト」の一環として企画され、東京の伝統産業に焦点を当てた展覧会「江戸東京リシンク展」(旧岩崎邸庭園、2024)の展覧会ディレクターを務めた。
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