※「はまなす団」: からくり時計に沼る20代ユニット。全国でからくり時計の調査・研究を続ける。
童謡・唱歌とおもちゃをテーマにしたミュージアム「わらべ館」(鳥取県鳥取市)は、開館30周年を記念し、特別展「はまなす団監修 からくり時計の世界 -時を彩る総合芸術-」を開催いたします。
からくり時計の持つ、日本人の技術と文化的な価値を多くの人に再認識してもらうことが目的で、入場無料で2025年11月2日(日)から約1ヶ月展示を行います。会期中、ギャラリートークやミニシンポジウムを行います。

大型のからくり時計は、1980年代から1990年代にかけて、日本経済の成長と歩調を合わせるように、特にバブル期には自治体による公共投資も後押しとなり、全国の公共施設や商業施設に次々と設置されて大ブームを巻き起こしました。コンピューター制御によって多彩な演出や表現が可能なからくり時計は、地域のシンボルとして人々に親しまれています。
そして、細やかな技術が必要なからくり時計の製作は、日本人の職人による高度な技術やアーティストの芸術性を知る歴史的な文化でもあります。
最盛期には全国で約1,200基が稼働していたとされますが、2000年代以降は、街角の再開発やからくり時計の老朽化、維持管理の問題などにより設置数が減少。現在では約400基弱まで、数を減らしています。
(はまなす団の調査による)
本展では、からくり時計の専門家としても活動を拡げる「はまなす団」監修のもと、全国から集めた、観光地のシンボルともいえるからくり時計を再現した高さ3メートルの作品をはじめ、アーティストが制作した作品や、家庭向けの小さなものまで約50点、映像では14点を紹介します。

主な展示作品
◆わらべ館 からくり時計
鳥取県鳥取市 わらべ館 1995年
文字盤の直径約2メートル30センチ 重量約1.5トン

わらべ館のシンボルとして1995年7月の開館と同時に稼働。
午前9時から午後5時まで、1日9回、毎時正時になると音楽とともに人形が動く。
鳥取県岩美町出身の音楽家・田村虎蔵が作曲した「金太郎」「花咲じじい」「一寸法師」
「大こくさま」に登場する昔話のキャラクターの人形が、ウェルカムバンドとして、来館者を迎える。
わらべ館からくり時計動画
人形制作者の大森達郎氏は、東京スカパラダイスオーケストラのメンバー・大森はじめ氏の父親である。2024年10月、鳥取市内で東京スカパラダイスオーケストラのライブが開催された際には、多くのファンがからくり時計を見にわらべ館を訪れた。
◆からくり函 ~お京太夫より~
夢童由里子 制作 夢童アート 所蔵 1999年
幅60センチ、高さ90センチ~140センチ(演出時)、奥行55センチ


制作当時は地域PR、愛・地球博などのイベント、作品展などで展示された。
「くぐつ師 お京太夫」が「からくり函」を操り、からくり人形の演技を披露するという演出で制作。「くぐつ師 お京太夫」は、後年、別作品に使用されたため、今回は残されたからくり時計部分を展示する。
夢童由里子(1944‐2015)造形作家、アートプロデューサー
和洋共生をテーマにモニュメント形態を採ったからくり人形を各地に設置。2005年に開催された愛・地球博では恒久保存を前提に、からくりモニュメント「日本の塔・月」を制作。現在も現地で見ることができる。
日本史、ことに尾張藩への造詣が深く、市民運動を先導し名古屋城本丸御殿を復元に導いた。素材に西陣織を用いるなど知識に裏打ちされた人形の美しさと、見るものを驚かせる仕掛けが特徴である。
◆機械式7セグ時計
からくりすと 制作・所蔵 2024年
幅20.8センチ、高さ10.3センチ、奥行9.5センチ

電子表示される数字を機械であらわした時計。
7つの板(セグメント)を歯車やカムを使って機械的に制御することで数字を表示する「7セグメント表示器」を6つ搭載している。動くパーツが多い構造でありながら、静かな動作音・滑らかな数字の切り替えを実現している。使用されたパーツは約500個。
からくりすと
宮城県刈田郡出身。東北芸術工科大学にてプロダクトデザインを専攻。
同大の卒業制作では時刻を筆記するからくり時計「書き時計」を制作。
SNSに投稿した動画が大きな反響を呼んだ。
以来、「構造の可視化」をコンセプトに、機械的な動力伝達のみで構成される構造体「からくり」を制作している。
◆閻魔大王 からくり人形
白石廉(はまなす団)制作・所蔵 2024年
幅1メートル50センチ、高さ3メートル、奥行1メートル50センチ

北海道登別温泉にある閻魔大王からくり山車のからくり人形を1/2スケールで再現したもの。地獄の審判の時間になると、閻魔大王が怒りの表情に変化する。
白石廉
はまなす団所属。京都芸術大学大学院2年生。彫刻や立体造形を専攻する。
5歳の頃、家族旅行で訪れた登別温泉の「登別地獄まつり」で、閻魔大王が怒りの形相に変わる場面に魅了される。以来、段ボールや粘土など素材を変えながら、閻魔大王をつくり続けてきた。
Xアカウント @ToKi2020kobo
E-mail dora9kuma5js@docomo.ne.jp
◆たけのうち幼稚園 からくり時計人形
学校法人小磯学園認定こども園 たけのうち幼稚園所蔵
こびと 高さ43センチ、幅20センチ
てんとう虫 高さ15センチ、幅15センチ


神奈川県相模原市にある、たけのうち幼稚園に約30年前に設置されたからくり時計の人形。
長年親しまれてきたが、老朽化により現在はからくりが動かなくなっている。
卒園生や保護者などの有志が募金活動を行い、からくり時計を再び動かすための復活プロジェクトが進められている。
◆Organum Temporis
板垣有哉(ともや)制作・所蔵 2025年
幅45センチ、高さ90センチ、奥行45センチ

毎正時、時計に組み込まれた『バレルオルガン』と呼ばれる小型のパイプオルガンで生演奏を行う。
電子音では出すことのできない、温かみのあるアコースティックサウンドが響く。
板垣有哉
音楽大学でフルートを学んだ後、専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジで腕時計の修理技術を学ぶ。卒業後、スイスの腕時計メーカーで修理の仕事を担当する傍ら、個人での時計制作を続ける。
◆ミネラルサウンドM606
リズム株式会社 個人所蔵 1998年
直径80センチ

定時になると収録されたロンドンフィルハーモニー管弦楽団の演奏に合わせて、ドイツ・ヘルムレ社製14本の棒鈴による実音演奏を行う。
◆からくり時計「子供楽隊」人形
SEIKO 株式会社中井脩 所蔵 1989年
シンバルの子供 幅20センチ 高さ22センチ
バイオリンの子供 幅23センチ 高さ27センチ
トランペットの子供 幅14センチ 高さ32センチ
太鼓の子供 幅24センチ 高さ27センチ

JR鳥取駅前のアーケード内にある時計店、中井脩本店に1989年から2019年まで設置されていたからくり時計の人形。1989年、8989鳥取・世界おもちゃ博覧会」の開催に合わせ、セイコーに依頼し、1500万円で製作した、近隣住民に愛されたからくり時計だったが、2019年3月、店舗改修に伴い撤去された。現在は、人形のみがオブジェとして店内に飾られている。
◆御園通商店街 からくり人形白浪五人男 人形旧衣装
御園通商店街振興組合所蔵 2002年

愛知県名古屋市中区・御園通商店街に設置されている「からくり時計 白浪五人男」の人形の旧衣装。「からくり時計 白浪五人男」は、1日5回、高さ12メートルのやぐらから人形が登場し、歌舞伎『青砥稿花紅彩画(白浪五人男)』の稲瀬川勢揃いの場面を再現するからくり時計である。本展では2022年のからくり時計リニューアル以前に人形が着用していた衣装を展示する。

◆ユメックス からくり時計の人形
個人所蔵
幅79センチ 高さ63.5センチ

愛知県豊橋市にある商業ビル「ユメックス」正面玄関に2023年2月まで設置されていたからくり時計の人形。不気味そうでありながらどこか惹きつけられる愛くるしさを併せ持つ、不思議な魅力がある。
◆全国の大型からくり時計を映像で紹介
・北海道札幌市 白い恋人パーク からくり時計塔
・北海道登別市 登別温泉「閻魔大王からくり山車」
・北海道登別市 登別第一滝本館「大金棒」※現在は公開を終了している
・岩手県花巻市 なはんプラザ「銀河ポッポ」
・栃木県日光市鬼怒川温泉 東武ワールドスクウェア
・埼玉県川口市 ららテラス川口
・岐阜県大垣市 弘光舎
・愛知県名古屋市 名古屋港水族館「浦島太郎伝説」
・奈良県大和高田市 大和高田さざんかホール
・島根県松江テルサ「タイムマシーンコンサート」
・島根県浜田市浜田駅前「どんちっち神楽時計」
・愛媛県松山市道後温泉「坊っちゃんカラクリ時計」
・福岡県飯塚市 飯塚本町商店街「長崎街道飯塚宿 からくり時計」
・宮崎県宮崎市 宮崎ブーゲンビリア空港「夢かぐら」 他
監修者紹介
はまなす団

担当=調査、交渉、執筆、書籍販売
青森県出身、富山県在住

担当=修繕、調査、広報
愛媛県出身、岐阜県在住

担当=調査、書籍デザイン、修繕、制作
北海道出身、京都府在住

本展監修の「はまなす団」は、全国でからくり時計の調査・研究を続ける任意団体です。2018年に結成。出身は北海道、青森、愛媛と様々で、現在の居住地も京都や岐阜、富山など様々です。子どもの頃に出会ったからくり時計の不思議さと可愛らしさに惹かれ、インターネットを通じて活動を続けており、最近では、好きが昂じて修理まで依頼されるほどです。
E-mail: karakuri7718@gmail.com
主な活動内容は次の4つです。
・全国のからくり時計の調査と紹介、ポータルサイトの運営
・SNSを中心とした最新情報・魅力の発信
・からくり時計の修理・保全のサポート
・記録撮影・映像アーカイブの制作

TBS『マツコの知らない世界』やNHKのニュース・ラジオ番組にも出演し、からくり時計の魅力を熱く語る個性も注目されています。
2025年9月~10月は、長野県安曇野市にある「エルサあづみ野」から依頼を受け、からくり時計の出張修理を行いました。
開催イベント
名称 はまなす団監修 からくり時計の世界 -時を彩る総合芸術-
会期 2025年11月2日(日)~2025年12月5日(金)
準備期間 2025年10月28日(火)10時~2025年11月1日(土)17時
はまなす団メンバーがからくり閻魔大王組み立てや展示準備を行います。
※取材対応が可能です
開館時間 9:00〜17:00
休館日 11月19日(水)
会場 わらべ館 エントランスホール(〒680-0022 鳥取県鳥取市西町3丁目202)
料金 無料
記念イベント
名称 はまなす団によるギャラリートーク
展示作品の見どころを監修者が自ら解説します。
日時 11月2日(日)10:30〜12:00
会場 1階 エントランスホール
定員 40名(要申込)
参加料 無料
解説 はまなす団
からくり時計 miniシンポジウム
中国地方のからくり時計を紹介する他、からくり時計の未来について語ります。
日時 11月2日(日)13:00〜14:30
会場 わらべ館 いべんとほーる
定員 60名(要申込)
参加料 わらべ館入館料(大人500円/高校生以下無料)
パネリスト はまなす団

担当よりごあいさつ
「バブル期から親しまれ、消滅の危機に瀕するからくり時計が、令和の今、注目を集めています。わらべ館の「顔」であるからくり時計を見たいと全国から旅行・観光目的でわらべ館を訪れる若者がコロナ後にじわりと増えています。からくり時計がこれほど10代、20代の若者に愛されるとは思わず、驚き、力をもらえました。
本展では、日本人の技術力の高さとアーティストの芸術性を知っていただきたいです。この大変な時代に、からくり時計がもたらす豊かな時間を届けたいと思っております。」

わらべ館 イベント係 高橋智美
わらべ館のからくり時計の制作者や、はまなす団について調査、取材を行い、童謡・唱歌研究情報誌に執筆。からくり時計の魅力をひろく伝えるため奔走している。
〈高橋の執筆記事〉
(公益財団法人鳥取童謡・おもちゃ館発行 童謡・唱歌研究情報誌『音夢』第17号掲載、2023年)
◆和洋の文化を体現するからくり時計 時代のうねりに抗し、魅力発信するネット世代
(公益財団法人鳥取童謡・おもちゃ館発行 童謡・唱歌研究情報誌『音夢』第19号掲載、2025年)
■ お問い合わせ先
わらべ館(公益財団法人鳥取童謡・おもちゃ館 代表 酒嶋優)
担当 イベント係 高橋 智美
〒680-0022 鳥取県鳥取市西町3丁目202
TEL 0857-22-7070
E-mail warabekan@warabe.or.jp
公式サイト:わらべ館 https://warabe.or.jp