金曜日, 6月 20, 2025
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シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]アート・インキュベーション・プログラム|2025年度 アーティスト・フェロー5組が決定!

4年目を迎えるCCBTの「アート・インキュベーション・プログラム」。2025年度アーティスト・フェローは、上田麻希、岸裕真、土井樹、藤嶋咲子、山内祥太の5組に決定!

シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT](以下、CCBT)では、CCBTのパートナーとして活

動する第4期アーティスト・フェローの公募・審査を行い、5組のフェローを選出しました。

今回、公募を行ったCCBTのコアプログラム「アート・インキュベーション」は、クリエイターに新たな創作活動の機会を提供し、そのプロセスを市民(シビック)に開放することで、都市をより良く変える表現・探求・アクションの創造を目指すものです。

本年度は、これからの社会や個人の在り方を考えるための「これからのコモンズ」を思考するアイデアや姿勢、ナラティブを、実験・触発(インスパイア)する企画・表現活動を募集しました。全国から

集まった応募は122件にのぼり、設定されたテーマに応答するように、人間を世界の中心とする考え方を批判的に乗り越え、非人間/非中心的な知覚や情報を起点に、多様な知を回復しようとする意欲的なプロジェクトが多数提案されました。

その中からCCBTでは、共創的かつ共感的プロセスを経て、世界を再解釈することに挑む5組をアーティスト・フェローとして採択し、ともにプログラムを展開していきます。

アーティスト・フェローによる活動は、今後順次公開予定です。

2025年度 アーティスト・フェロー

・上田麻希(うえだ まき)

・岸 裕真(きし ゆうま)

・土井 樹(どい いつき)

・藤嶋咲子(ふじしま さきこ)

・山内祥太(やまうち しょうた)

シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]

アート・インキュベーション・プログラム

主催:東京都、シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT](公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京)

1. アーティスト・フェローとは

クリエイティブ × テクノロジーで東京をより良い都市に変える表現・探求・アクションをつくり出す、国内最大規模となるアーティスト・フェロー制度

CCBTのコアプログラム「アート・インキュベーション」では、公募・選考によって選ばれたクリエイターを「アーティスト・フェロー」として委嘱しています。フェローは、CCBTを拠点に企画の具現化と発表に取り組むとともに、創作プロセスの公開やレクチャー・ワークショップの開催など、CCBTのパートナーとして多彩な活動を展開します。CCBTは、最大1,000万円の制作費に加え、制作スペースの提供、技術・マネジメント面での支援、メンターをはじめとする専門家によるアドバイスなどを通じて、フェローの活動を全面的にサポートします。

本プログラムでは、これまでに15組のアーティスト・フェローと協働し、新たな作品/表現を生み出しています。CCBTで生まれた作品群は、その独自性と実験性が高く評価され、更なる更新や拡張を経て国内外の多様な都市や文脈において紹介されており、新たな想像力の地平を開いています。

アーティスト・フェローの活動

(1)新たな表現の創造・研究開発および発表

CCBTを拠点に創作活動・研究開発等を行い、その成果をCCBTおよび都内にて発表・展開する。

(2)創作活動・研究プロセスの公開

創作活動およびそのプロセスの公開や、ワークショップ、レクチャー、ハッカソン等の開催を通じ、市民がテクノロジーを通じた創造性を学ぶ機会を創出する。

(3)多様な人々との協働と共創

市民、アーティスト、デザイナー、エンジニア等、CCBTに集う人々、さらにはCCBTを取り巻く様々な主体との協働を牽引し、未来を共創する場を創造する。

フェローによるその後の展開

2022年度フェロー
浅見和彦+ゴッドスコーピオン+吉田山
「AUGMENTED SITUATION D」

2024年11月~2025年1月にかけて、金沢・広島・大阪の3都市での展開を実現。

左:CCBTでの成果発表の様子(2023年、東京)右:「AUGMENTED SITUATION D 回遊する都市の夢」(2024年、金沢)

2022年度フェロー

木原共 + Playfool

「Deviation Game ver 1.0」

作品発表後、イギリス、アメリカ、台湾をはじめとする多数の国と地域において紹介される。

左:CCBT COMPASS 2024(2024年、東京)右:「Friday Late: Is This For Real?」(2025年、ヴィクトリア&アルバート博物館・イギリス)Photo: @Hydar Dewachi.

2025年度は、メディア研究者、法律家に加えて、シビック・テックの専門家や建築家が参画。メンターとしてアーティスト・フェローの活動に専門的視点から伴走します。

2025年度 アート・インキュベーション メンター

・四方幸子(キュレーター、批評家)
・清水知子(文化理論、東京藝術大学教授)
・関治之(一般社団法人 コード・フォー・ジャパン 代表理事)
・津川恵理(建築家、ALTEMY代表)
・水野祐(法律家/シティライツ法律事務所)

2. 2025年度 公募概況

2025年度は、「これからのコモンズ」をテーマに公募を行い、122件の応募がありました。7名の審査員による書類・面接審査を行い、5組の2025年度CCBTアーティスト・フェローを決定しました。

公募概況

<募集活動テーマ>

「これからのコモンズ」

テクノロジーの発展が拓いた新たな活動空間「デジタル・コモンズ」、地球環境や生態系の自然資源「グローバル・コモンズ」等の考え方を前提に、これからの社会や個人の在り方を考えるための「これからのコモンズ」を思考するアイデアや姿勢、ナラティブを、市民を巻き込んで実験・触発(インスパイア)する、あらゆるクリエイティブな企画・表現活動。

<応募資格>

・日本在住であること

・18歳以上であること

・5年以上の活動歴を有すること ほか

<公募期間>2025年4月1日(火)〜 4月20日(日)

<応募総数>122件(選考通過率4%)

<審査会委員>

・四方幸子(キュレーター、批評家)
・清水知子(文化理論、東京藝術大学教授)
・関治之(一般社団法人 コード・フォー・ジャパン代表理事)
・津川恵理(建築家、ALTEMY代表)
・水野祐(法律家/シティライツ法律事務所)

・小川秀明(CCBTクリエイティブディレクター)

 *加えて、CCBTテクニカル・ディレクターが審査に参加

総評

今年で4回目を迎えた本公募には、「クリエイティブ×テクノロジーで東京をより良い都市に変える」という理念のもと、「これからのコモンズ」に呼応する122のアイデアが集まりました。最新のセンサー技術を用いたシチズンサイエンスプロジェクトや、育児などの都市課題に気づきを与え行動を促すVRプロジェクト、さらには私たちの日常を取り巻く空気や匂いといった身近なコモンズの再発見が含まれています。また、ロボットやAIと人間の関係を公園に展開する試みや、植物とのコミュニケーションをテーマにした新しいコモンズの提案プロジェクトも選ばれました。多様なメンターと共に、東京発の未来のコモンズを探求し、多くの人々との共創を期待しています。(小川秀明)

3. 2025年度 アーティスト・フェロー選考結果

上田麻希「見えない空気を可視化する ~コモンズとしての空気と匂い~」

匂いを手がかりに「コモンズとしての空気」について学び、見えない空気を見える化・体験化する複合プロジェクト。レクチャー・ワークショップからなる学びの場の創出、極めて主観的な感覚である嗅覚をテクノロジーで測ることで嗅覚世界を可視化するリサーチ、空気の循環を表現する空間作品を制作・発表する三つのパートから成る。人間を含む全ての生物が多種多様な情報をやりとりしている「空気」から、生物多様性やバイオームへの思考を促し、世界を捉える新たな視点を生み出すことを目指す。

企画イメージ
参考「Aerosculpture (空気の彫刻) 」(2022年、京都嵐山芸術祭)

上田麻希

匂いをマテリアルとして扱う「嗅覚アーティスト」。世界的な先駆者として嗅覚アート界を牽引。令和6年度文化庁長官表彰をはじめ、受賞歴多数。現在は石垣島を拠点に嗅覚アートの研究・普及に取り組む傍ら、国際的に展示活動を展開する。

審査会委員コメント

空気を「コモンズ」と捉え、匂いに焦点を当て可視化する本企画は、メディアアートを学んだ上で20年以上匂いを研究し、国内外で活動する嗅覚アーティスト上田麻希が培った独自のノウハウを広く共有する初の機会となる。中でも東京の空気の計測データを介した可視化は、俯瞰的・社会的な視点をもち、CCBTのフェロー活動を通した展開が期待される。自明すぎるため普段意識されにくいが人や生物全般の生存や行動を左右する空気に、その只中に入り込む体験と可視化による俯瞰という主客双方からアプローチすることで、「東京」をこれまでにないかたちで浮上させる野心的な試みとして評価した。(四方幸子)

岸裕真「平行植物園」

植物的視点から現代の人工知能( A I ) を捉え直した、「植物知性( B I ・Botanical Intelligence)」を開発するプロジェクト。光・風・土壌などの多元的な環境データを精緻にセンシングし、テキストや音声を出力する「生成BI」の実装を通して、人間・人間以外が共に繁栄できる「コモンズ」の開拓を目指す。完成したシステムはインスタレーション作品として植物園などにおいて公開するほか、研究開発の過程では専門家との協働や、オープンレクチャー、ワークショップ等の開催を予定。CCBTを拠点に、すべての存在にとっての共有資源である自然から思考し、新しい共栄地帯を発見することに挑む。

企画イメージ
参考「Organs」(2025年、√K Contemporary)
        Photo:手塚 なつめ

岸裕真

人工生命(AI)を「Alien Intelligence(エイリアンの知性)」と捉え直し、人間とAIによる創発的な関係「エイリアン的主体」を掲げて、自ら開発したAIと協働して絵画、彫刻、インスタレーションの制作を行う。

審査会委員コメント

AIを「Alien Intelligence(エイリアンの知性)」と捉え直し、自らが開発するAIと協働して、数々の作品を発表してきた岸裕真。AIが人間の知的能力を模倣する技術であったのに対し、今回は人間以外の知能として、「Botanical Intelligence(植物知性)」を開発するという、提案の可能性に議論が起こった。開発予定の人工知能は、AIのような大規模言語モデルではなくスモールエッジデバイスとして、人の知能ではなく人以外の知能として、未来を開拓する。その未来を予感させるインスタレーションでは、人と人以外の間にあるコモンズを感じられる瞬間となることを期待したい。(津川恵理)

土井樹「Weather」

風の流れ、気温、照度など、微細な環境変化を捉えるセンサーを市民とともに創作し都市に設置することで、従来の気象庁などによる広域データでは捉えられない「微気候(microclimate)」を収集し、オープンデータとして公開。さらに収集したデータを音・光・風などの知覚体験に変換するシステムを開発し、これを用いたインスタレーション作品を発表する。プロジェクトを通じて、言語やイメージに偏ったデジタル社会において、人間の身体性に根差した「別種の知」を取り戻すことを試みる。

企画イメージ
参考「Time Tone」(evala + Itsuki Doi、2025年、2025年日本国際博覧会会場全域)

土井樹

複雑系の研究者であり、音楽家。 社会性生物の群れの同期現象などをテーマに研究を行うとともに、 人工システムを含む「他者」が持つ固有の経験や感じ方を、その存在自身の立場から理解するための手段をテーマとして作品制作を行う。

審査会委員コメント

市民参加型の微気候センシングネットワークと芸術表現を結ぶ「Weather」は、AIが台頭する現代において「言語以前」の身体感覚に光を当てる時代性のある提案として高く評価できる。技術開発から市民参加型ワークショップ、データ収集、作品制作、展覧会開催までの包括的な実施計画、オープンソースによるデジタル・コモンズ構築という公共性への視点、そして気象データと感覚体験のマッピングにおける「必然性」を追求する研究的姿勢が特に印象的である。単なるデータ・ビジュアライゼーションを超え、都市の微気候を音・光・風として体感できる装置群は、テクノロジーと身体性の新たな関係を模索する重要な実験となるだろう。市民科学とアートの境界を越えた挑戦的な取り組みに期待したい。(関治之)

藤嶋咲子「コエノクエスト ̶ 都市に残されたセーブデータ」

都市に埋もれた声を可視化し、これまで交わることのなかった他者との対話の場を生み出すことで、世界の見え方に揺らぎを与えるゲーム作品を制作するプロジェクト。ゲーム内に登場するアバターは、実在する都市生活者の語りをもとに生成され、プレイヤーはその営みや痛みに触れながら、自身の輪郭の外側にある価値観や生き方に出会っていく。体験はインスタレーションとして展開され、記録された対

話のログは再編集のうえ公開される。年齢、性別、国籍、経済状況、思想などに起因する分断を背景に、すれ違う声が交差する状況から、新たなコモンズの可能性をひらく手がかりを探る。

企画イメージ
参考「On Double-dealings, Demos, and Discontent」(2024年、WATOWA GALLERY)

藤嶋咲子

アート×ゲーム×社会問題を軸に、絵画やインタラクティブな手法で現代社会との関係を探る。代表作「WRONG HERO」では、RPG的構造で社会的役割を問い直し、参加型の表現を展開した。

審査会委員コメント

本提案は、都市において人がさまざまに抱えている孤独や生きづらさ等を、AI技術を用いたゲームにおける独白や対話を通じて顕在化させる体験型の作品です。このような日常において表出しづらい、埋もれがちな声や対話の「居場所」は現在の都市に欠けているものの一つです。アーティスト、CCBT、そして参加者による協働によりこの居場所を育てていく営為が都市における新しいコモンニングとして、都市の変革につながることを期待しています。(水野祐)

山内祥太「未知との遭遇」

「未知なるものとは何か」という問いを出発点に、言語の枠組みに依存しない、ヒューマノイドと人間のあいだに生まれる新たなコミュニケーションの形を構想するプロジェクト。インスタレーション作品として屋外での発表を予定しており、「未知」との遭遇――すなわち「新たな自然」との出会いを試みる。作家自らによるデモンストレーションやレクチャーを通じて制作過程は広く公開され、ともに未知なるもの(未来)について想像することから、プロジェクトを通じて「これからのコモンズ」をかたちづくる想像力を養う。

企画イメージ
参考「舞姫」(2021年、Terrada Art Award 2021)Photo:Tatsuyuki Tayama
Photo: Seichi Saito

山内祥太

アーティスト。自己と世界との関係性や、現実と空想の裂け目を探る表現を試みている。自己と世界の関係性を主題に、映像、彫刻、パフォーマンス、さらには匂いを用いたインスタレーションなど多様なメディアを横断しながら制作を行う。

審査会委員コメント

本企画は、公園という「自然」に「未来の自然」としてのヒューマノイドを配し、非言語的な交感を通じて他者との関係性を根源から問い直す試みである。“誤読”や“ズレ”をあえて媒介とすることで、AI時代における共生の想像力を喚起し、市民の日常に哲学的な問いを投げかける。技術と感性、都市と自然、人間と非人間の交錯点に立ち上がるこのプロジェクトは、山内氏がこれまで追究してきた身体・感情・テクノロジーの接点における批評的実践を都市空間へとひらくものであり、本企画が未知なるものとともに生きる感受性を市民と育み、東京の未来に向けた対話の場を創出することを期待している。(清水知子)

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