2025年10月29日(水) – 12月26日(金)


KOTARO NUKAGAは、2025年10月29日(水)から12月26日(金)まで、アニー・モリスとイドリス・カーンの二人展「A Petal Silently Falls」を開催します。
開催概要
会期: 2025年10月29日(水)– 12月26日(金)
開廊時間: 11:30 – 18:00(火 – 土)
※日月祝休廊
オープニングレセプション:
天王洲会場:10月29日(水)16:00 – 18:00
六本木会場:10月29日(水)16:00 – 19:00
※アニー・モリス、イドリス・カーンが在廊
※17:00頃、天王洲→六本木のバスをご用意しております(先着順)。
会場: KOTARO NUKAGA(六本木)
〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
KOTARO NUKAGA(天王洲)
〒140-0002 東京都品川区東品川1-32-8 TERRADA Art Complex II 1F
※2会場同時開催
展覧会の見どころ
(1) モリスとカーン、対照的な作風が奏でる共鳴


鮮烈な色や力強い形態を用いた表現が特徴的なモリスと、言葉やイメージを生み出し、静謐で思索的な作品を生み出すカーン。一見対照的な作風を持つ二人ですが、要素の反復や色彩への感覚など、お互いの要素を徐々に取り入れて制作を続けてきました。会場では、二人の作品の共鳴をぜひお楽しみください。
(2) 喪失から希望へ — 悲しみを共に乗り越えた二人の物語

夫婦でもある二人は、最初の子どもを流産で失った深い喪失を経験し、その痛みを創作へと変換してきました。モリスは、卵や赤子の体を想起させる球体を不安定に積み上げる「Stack」シリーズで、失われた存在への哀惜と、脆くかけがえのない生命のありようを表現。
カーンは、祈りの唱和を思わせるような、同じ単語や語句を繰り返し反復するプロセスによって積み重なった時間や記憶を可視化し、喪失の感情を作品に昇華させています。

(3) 日本初の展覧会

個人として国際的な評価を確立する二人。モリスは2022年フランスのシャトー・ラ・コストで開催された展覧会では、同館に設置されたフェミニズム・アーティストの巨匠ルイーズ・ブルジョワの作品《うずくまる蜘蛛》と向き合う形で展示された数々の「Stack」が多くの鑑賞者の心を惹きつけ、高く評価されています。
一方、カーンは活動初期の2008年に20世紀美術の珠玉のコレクションで知られるドイツ・デュッセルドルフの美術館K20で個展を開催し、2016年には大規模な戦没者記念モニュメントをアブダビ政府からの依頼を受けてデザインし設置。2025年9月にはオバマ財団から依頼を受けた作品制作が発表されるなど、現在に至るまで精力的に活動し、2017年には芸術への貢献を認められ大英帝国勲章(OBE)を受勲しました。
本展は、両者共に日本初の展覧会です。二人がそれぞれに歩んだ芸術的実践の道のりと、奥底に秘めた共鳴をぜひご体感いただければ幸いです。
展覧会ステートメント(山本浩貴 | 文化研究者・実践女子大学准教授)
文化研究者・実践女子大学准教授で、ロンドン芸術大学トランスナショナルアート研究センター博士研究員を歴任し、著作『現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル』(中央公論新社、2019)で知られる山本浩貴氏による本展にむけたテキストはこちらからご覧いただけます。
アニー・モリス(Annie Morris) プロフィール

1978年 ロンドン生まれ。 パリの国立高等美術学校でジュゼッペ・ペノーネに師事した後、ロンドンのスレード美術学校を修了。
タペストリー、絵画、ドローイング、彫刻など幅広く手がけるモリスの作品の中で最もよく知られているのは、カラフルで不規則な形の球体を垂直の芯棒に通して重ねた彫刻作品「スタック」シリーズである。「スタック」は石膏や鋳造のブロンズで作られ、群青、緑色、黄土色などの鮮やかな顔料を用いて成形される。流産を経験し悲しみに沈んでいる時期に始められたこのシリーズでは、台座の上で球体が倒れてしまいそうなバランスで浮かんでいるように見え、生命の奇跡とその不安定さの両側面が表現されている。「スタック」シリーズに加えて、モリスはドローイングのようなタペストリーや直線的な造形の人物彫刻、そして画面全体に描かれた「フェイス」シリーズのように官能的な表現言語による抽象絵画を通じて女性の身体性について探求を行う。これらの作品は、女性の身体が宿す無数の様態を示すものである。
作品はこれまでに、復星芸術センター(上海 / 中国)、シャトー・ラ・コスト(プロヴァンス / フランス)、ヨークシャー彫刻公園(ウェスト・ヨークシャー / イギリス)等にて展示。また、龍美術館(上海 / 中国)、フォンダシオン ルイ・ヴィトン(パリ / フランス)(上海 / 中国)、コロラド大学美術館(ボルダー / アメリカ)などに作品が収蔵されている。
イドリス・カーン(Idris Khan) プロフィール

1978年 イギリス・バーミンガム生まれ。ダービー大学で写真を学んだ後、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートにて修士号を取得。2017年、大英帝国勲章(the Order of the British Empire)を受勲。
イドリス・カーンは、写真・絵画・彫刻を横断し、同一のモチーフやテキスト、楽譜を幾度も重ねる「反復」と「多層化」によって、時間と記憶の堆積を可視化する。初期の「every…」シリーズでは、コーランのページやベッヒャー夫妻の写真作品など既存のイメージを重ね合わせ、普遍的な形態と集合的記憶の輪郭をもつ新たな像を生じさせている。また、《65,000 Photographs》をはじめとする彫刻作品では、数年間にわたり自身の携帯で撮影した膨大な画像をプリントして積み重ね、無形のデジタルデータを量塊として物質化し、記録することに対して執着する我々の強迫的な態度と、記憶のあり方の変化を批評的に示す。2016年にアラブ首長国連邦・アブダビのメモリアル・パークで戦没者追悼記念碑を制作した他、2024年にミルウォーキー美術館(ミルウォーキー / アメリカ)で大規模個展「Idris Khan: Repeat After Me」を開催。作品は大英博物館、ポンピドゥー・センター(パリ / フランス)、ワシントン・ナショナル・ギャラリー(ワシントン / アメリカ)など、国際的なミュージアムに収蔵されている。