出品点数300点以上の密度の高い圧巻の展示構成。11月24日(月・休)まで開催。

開催趣旨
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)では、2013年の「大竹伸朗展 ニューニュー」に続いて12 年ぶりに大竹伸朗(1955-)の個展を開催します。大竹は1970年代後半より作品発表を始め、ドクメンタ(ドイツ)やヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)など重要な国際展への参加を経て、近年では東京国立近代美術館を皮切りに愛媛、富山へと巡回した大規模な個展まで、国内外での幾多の展覧会を開催してきました。その半世紀におよぶ活動を通じ、圧倒的な熱量が生み出した膨大かつ多様な作品の数々から、本展は〈網膜〉にフォーカスすることにより大竹の作品世界をさらに掘り下げようとするものです。
〈網膜〉シリーズは、1988年に制作の拠点を移した宇和島のアトリエで着想され、1990年代初頭まで集中的に制作されたあとも、他のシリーズへの展開を伴いながら制作が続けられてきました。網膜とはそもそも眼球の最奥にある、光を感受し視神経を介して脳に情報として伝える機能を担う薄い透明の膜ですが、大竹は、廃棄された露光テスト用のポラロイド・フィルムに残された光の痕跡を大きく引き伸ばし、その表面に透明の絵具としてウレタン樹脂を塗布する絵画作品のシリーズに、この名をつけました。分離している「写真像の色面」と「透明の塗膜層」の2つが私たちの網膜を介して脳内で統合され、「時間」と「記憶」を内包した新たな像として立ち現れます。新作の〈網膜〉ではさらなる更新が試みられる一方で、長期間放置され変質した感光剤がそこに蓄積する時間を像として刻印し、透明の塗膜層はその像を幾重にも覆います。未だ見ぬ記憶として、〈網膜〉の発する情景は私たちを揺さぶり続けるのです。
こうして新たに創り出された渾身の新作〈網膜〉12点に加えて、〈網膜〉に音と光を組み込んだ、高さ約3mのレリーフ状の新作《網膜/六郷》(2025)、そして1990年代初頭に制作された未発表の大型〈網膜〉をはじめとした作品群が核となり、構想時のサイズに更新した大規模インスタレーション《網膜屋/ 記憶濾過小屋》(2014)、2010年代半ばから続くグアッシュの連作〈網膜景〉や油彩のシリーズ〈網膜/境〉といった、「時間」や「記憶」を介して〈網膜〉と絶えず往還し続ける作品が骨格となります。本展では、さらに「眼」「フィルム」「写真」から〈網膜〉へと接続する膨大な数の作品をも取り込みながら拡がり続ける大竹の〈網膜〉世界を展観します。MIMOCAでは1991年の開館以来150本を超える企画展を実施してきましたが、本展は当館の歴史においても最大規模と密度を有する展覧会となるだけでなく、大竹の現在地を示し、これからの展開を予感させる極めて重要な展覧会となることでしょう。


本展の見どころ
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本展にあわせて創り出された新作〈網膜〉シリーズ12点を展示
30年以上の時間が蓄積された、新作〈網膜〉シリーズが一堂に会します。 -
総数300点以上の密度の高い圧巻の展示構成
本展は常設展示室以外、1階エントランスを含めたすべての展示室を使った密度の高い圧巻の展示構成になっています。展示数は作品・資料を含め300点以上になります。 -
本展オリジナルグッズを多数展開
ニューシャネルTシャツなどで人気のある大竹グッズ。今回も、本展限定のオリジナルグッズなどを多数展開します。
1.本展にあわせて創り出された新作〈網膜〉シリーズ12点を展示
1988年、大竹は露光テスト用に使用された後、廃棄されたポラロイド・フィルムを入手したことがきっかけとなり、〈網膜〉シリーズの着想を得て、1989年から1990年代初頭にかけて、〈網膜〉シリーズの制作に集中的に取り組みました。その後も断続的にこのシリーズの制作を続けてきましたが、大竹はアトリエに30年以上保管してきたフィルムを用いて、本展のために新たな大型の〈網膜〉12点を制作しました。
ここでは、2024年12月にMIMOCA 館内での制作を経て完成した、新作〈網膜〉の一部をご紹介します。








すべて 1989年-2024年 ©Shinro Ohtake Photo by Shimpei Yamagami
2.総数300点以上の密度の高い圧巻の展示構成
1階エントランス
大竹は1988年に東京から宇和島に制作の拠点を移し、時期を同じくして着想されたのが〈網膜〉シリーズです。本展で最初に鑑賞者を出迎えるのは、〈網膜〉シリーズの中でも、最初期であり高さ約3m もある平面作品《網膜火傷》(1990)です。

3階展示室C
メインの展示室では、新旧の〈網膜〉シリーズを一堂に展示します。
まず最初に、本展のために新たに制作された12 点の〈網膜〉シリーズをご覧いただけます。また、大型インスタレーション《網膜屋/記憶濾過小屋》(2014)は、さらに手が加えられ11年ぶりの公開が実現しました。
そこから展示室を進むと、1990 年代初頭に制作された未発表の大型作品〈網膜〉や巨大なレリーフ状の最新作《網膜/六郷》(2025)、そして〈網膜〉シリーズから派生し、多様なメディアや形式へと展開した、〈網膜景〉や〈網膜/境〉などの作品が登場します。
平面、立体、インタレーション、音、光や映像に至るまで、大竹の〈網膜〉世界を体感してください。

2階展示室A
展示室Cで〈網膜〉の世界を体感していただいたあとは、展示室A で〈網膜〉シリーズの成り立ちや、本シリーズに関連する作品および資料を紹介します。
〈網膜〉と接続が可能な「眼」「フィルム」「写真」といった言葉を糸口に、大竹の幼少期や学生時代の記憶、幅広い制作活動の軌跡を辿ります。

3.本展オリジナルグッズを多数展開
本展にあわせてデザインされた限定オリジナルグッズが登場。本展タイトルのロゴタイプや大竹のドローイングを再構成したTシャツ、今回の核である〈網膜〉を大胆にカットアウトした靴下やトートバッグなど、〈網膜〉の世界を身につけて楽しめるアイテムが揃います。さらに、大竹自身が描き下ろした当館オリジナルキャラクター「イノカメグマ」をあしらったタオルや、本展のビジュアルを広く手がけたデザイナー・町口覚によってアレンジが加えられた展覧会ポスターもご用意しています。〈網膜〉をもとに制作されたグッズを日常に取り入れることで、本展の記憶をより深く刻むことができるでしょう。ここではオリジナルグッズの一部をご紹介します。ぜひ会場でお手に取ってご覧下さい。
Tシャツ 《白目玉》
大竹のドローイングを再構成したTシャツです。
価格:4,400円(税込)
サイズ:M/L/XL(ユニセックス)
素材:綿100%
販売日:8月1日

Tシャツ 《黒RETINA》
本展のために作ったロゴタイプのTシャツ。
背面は「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」から、「亀猪熊
美」の4文字を抜き取り、組み合わせています。
価格:4,400円(税込)
サイズ:M/L/XL(ユニセックス)
素材:綿100%
販売日:8月1日

靴下 《網膜/漠悸》、《網膜上の青》、《網膜/十五重塔》*左から順に。
作品を大胆にカットアウトした靴下です。
価格:2,200円(税込)
サイズ:23~ 27㎝
素材:ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン
販売日:8月1日

タオル《イノカメグマ》
大竹が当館オリジナルキャラクターをイメージして新たに描き下ろした「イノカメグマ」。タオルは特製の紙熨斗袋に入っています。当館1階ミュージアムショップ限定販売。
価格:770円(税込)
素材:綿100%
販売日:8月1日

ステッカー(6種類販売予定)
大竹の作品をステッカーでも楽しめます。
価格:440円(税込)
販売日:8月1日

「大竹伸朗展 網膜」カタログ
大竹へのロングインタビューや〈網膜〉シリーズの新作・未発表作品の図版、さらに、気鋭の写真家・山上新平による撮り下ろしのインスタレーションビューを収録したカタログを現在制作中。本展の展示構成をもとに編まれた本書は、単なる記録にとどまらず、大竹の作品世界へ深く潜り込むための必須の一冊となるでしょう。
タイトル:「大竹伸朗展 網膜」(仮称)
発行予定:10月
出版社:月曜社
造本:町口覚(Satoshi Machiguchi+MATCH&Co.)
今後販売予定のグッズ
〈網膜〉を表面に大胆にプリントした総柄Tシャツ(特別仕様巾着袋付き)やトートバッグなどが登場します。販売時期は8月下旬~ 9月上旬を予定しています。
今後、新たな情報は当館WEB サイトまたはSNS でお知らせします。
総柄Tシャツ*巾着袋付き
《網膜/十五重塔》
《網膜/漠悸》

トートバッグ
《網膜/十五重塔/門の前》
《網膜/漠悸/段滝》

関連プログラム
オープニング・トーク
本展初日に、出品作家・大竹伸朗と本展担当キュレーター・中田耕市によるトークを開催します。
講師:大竹伸朗(出品作家)
聞き手:中田耕市(当館副館長兼チーフ・キュレーター)
日時:2025 年8 月2 日(土) 16:00ー17:30
会場:2 階ミュージアムホール
料金:無料
定員:150 名(当日11:00より会場前にて整理券を発行します)
ナイト・ミュージアム〈夜間特別開館〉
通常18:00閉館のところ、20:00まで開館時間を延長します。(入館は19:30まで)
実施日:2025年8月2日(土)、8月23日(土)、10月4日(土)、11月8日(土)
キュレーター・トーク
本展担当キュレーター(中田耕市、古野華奈子、松村円)が展示室で見どころをお話しします。
日時:2025年8月3日(日)、9月7日(日)、10月5日(日)、11月2日(日) 各日14:00ー
参加料:無料(別途、本展観覧券が必要です)、申込不要
親子でMIMOCAの日
高校生以下または18歳未満の観覧者1名につき、同伴者2名まで観覧無料となります。
日時:2025年10月18日(土)、19日(日) 10:00ー18:00(入館は17:30まで)
開館記念日 MIMOCA’S BIRTHDAY
毎年、開館記念日は全館入場無料とし、日頃から支えてくださっている皆さまに感謝の気持ちをこめて、楽しいイベントを開催しています。今年も1日限りで、すべての展覧会を無料でご覧いただけます。
実施日:2025年11月23日(日・祝)
*その他のプログラムは決まり次第、当館WEBサイト等でお知らせいたします。
連携プログラム
代官山 蔦屋書店「大竹伸朗展 網膜」フェア
本展の開幕にあわせ、代官山 蔦屋書店(東京都)で「大竹伸朗展 網膜」フェアを開催します。
期間:2025年8月1日(金)~8月31日(日)
場所:代官山 蔦屋書店 2号館1階 ギャラリースペース
企画:江川賀奈予
構成・ディレクション:町口覚(Satoshi Machiguchi+MATCH&Co.)
「大竹伸朗展 網膜」フェア 関連イベント
大竹が雑誌『新潮』で連載していたエッセイをまとめた、新刊『絵の音』(新潮社刊)の刊行を記念して、サイン会を実施します。
サイン会の予約方法についての詳細は上記のURL からご確認ください。
日時:2025年8月30日(土) 18:00~19:00 / 19:00~20:00 (予約制)
場所:代官山 蔦屋書店 2号館1階 アートカウンター
出品作家プロフィール

大竹伸朗(おおたけしんろう)
1955年東京都生まれ。主な個展に東京国立近代美術館/愛媛県美術館/富山県美術館(2022-23)、熊本市現代美術館/水戸芸術館現代美術ギャラリー(2019)、パラソルユニット現代美術財団(2014)、高松市美術館(2013)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(2013)、アートソンジェセンター(2012)、広島市現代美術館/福岡市美術館 (2007)、東京都現代美術館 (2006) など。また国立国際美術館(2018)、ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート(2016)、バービカン・センター2016) などの企画展に出展。ハワイ・トリエンナーレ(2022)、アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2018)、横浜トリエンナーレ(2014)、ヴェネチア・ビエンナーレ(2013)、ドクメンタ(2012)、光州ビエンナーレ(2010)、瀬戸内国際芸術祭(2010、13、16、19、22) など多数の国際展に参加。また「アゲインスト・ネイチャー」(1989)、「キャビネット・オブ・サインズ」(1991)など歴史的に重要な展覧会にも多く参加している。なお香川県内では、直島、豊島、女木島(女木島は瀬戸内国際芸術祭会期中のみ)で作品を公開している。
開催概要
展覧会名:大竹伸朗展 網膜
会期:2025 年8月1日(金)ー11月24日(月・休)
開館時間:10:00ー18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜日(ただし8月11日、9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館)9月16 日(火)、10月14日(火)、11月4日(火)
主催:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、公益財団法人ミモカ美術振興財団、「瀬戸芸美術館連携」プロジェクト実行委員会(事務局:公益財団法人 福武財団)、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
観覧料
一般1,500円(団体割引1,200円、市民割900円)
大学生1,000円(団体割引800円、市民割600円)
高校生以下または18 歳未満・丸亀市内に在住の65 歳以上・各種障害者手帳をお持ちの方とその介護者1 名は無料
*同時開催常設展「猪熊弦一郎展 Since 1955」観覧料を含みます。
*団体割引は20名以上の団体が対象です。
*市民割は丸亀市民が対象です。チケットご購入時に証明する書類(運転免許証、保険証など)のご提示が必要となります。団体割引を含み、他の割引との併用は出来ません。
同時開催の常設展
「猪熊弦一郎展 Since 1955」
会期:2025年8月1日(金)ー11月24日(月・休)
「大竹伸朗展 網膜」以降の企画展のお知らせ
「ジャネット・カーディフ 40声のモテット(仮称)」
「猪熊弦一郎展」
会期:2025年12月13日(土)ー2026年2月15日(日)
◎お問い合わせ先:0877-24-7755(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)


令和7 年度日本博2.0 事業(委託型)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(愛称:MIMOCA)
1991年開館、30年を超える活動
1991年11月23日、JR 丸亀駅前に開館。同時代の新しい表現を積極的に紹介する「現代美術館」を望んだ猪熊弦一郎の考えを受け継ぎ、猪熊作品を中心とした常設展、現代美術にフォーカスした企画展、子どものためのワークショップなど、多彩なプログラムを展開しています。さらに、当館は猪熊弦一郎の遺した絵画やドローイングなど作品約2 万点を所蔵しています。猪熊が「対話彫刻」と名付けた小さな作品群、猪熊夫妻が各地で収集しその生活を彩っていたコレクションなどの多数の資料とともに、常設展や企画展を通して、猪熊の活動を深く、広く紹介しています。

現代美術に特化した美術館として
現代美術を中心とし、企画展として国内外のアーティストの活動を展観。これまでにヤン・ファーブル、マリーナ・アブラモヴィッチ、マルレーネ・デュマス、エルネスト・ネト、杉本博司、塩田千春、ホンマタカシ、石内都らの個展を開催する一方、金氏徹平、小金沢健人、志賀理江子、中園孔二ら気鋭のアーティストの紹介にも積極的に取り組み、近年では若手作家を対象とした公募展「MIMOCA EYE」を立ち上げました。また、同時代のクリエイティブな表現にも着目し、ファッションやファニチャーといったデザイン、現代建築にも拡張しています。

谷口吉生の設計による美しい建築
設計は、数々の美術館建築を手がけ、高い評価を受ける谷口吉生。猪熊との対話によって、アーティストと建築家の理念が細部に至るまで具現化されています。猪熊弦一郎の巨大な壁画《創造の広場》が眼を引く伸びやかなファサードは、駅前広場と建築をゆるやかに結びつけ、館内に入ると自然光をふんだんに取り込んだ、開放的な空間が広がります。2階には対照的なプロポーションをもつ2つの展示室があり、3階の天井高約7m の豊かなスケール感をもつ展示室へと続きます。
さらに、正面左側の大階段はアートへのさまざまなアプローチを可能にするパブリックな空間へと接続しています。2階のアートセンターには、ライブラリー、ホール、スタジオが備わり、3階最奥部にあるカスケードプラザとカフェも来館者に心地よい時間を提供します。
