このたび公益財団法人宝塚市文化財団では、都市の夜景をテーマにした絵画で注目を集める画家、山崎雅未(やまさき・まみ、1987年~)の個展を、宝塚市立文化芸術センター(兵庫県宝塚市)において開催します。

このたび宝塚市・公益財団法人宝塚市文化財団は宝塚市立文化芸術センターにて山崎雅未の個展「Anywhere」を開催いたします。
山崎(やまさき)雅未(まみ)(1987年生まれ、宝塚市育ち)は、人工知能が生成した都市の夜景を、自身の身体を介して再び描き出します。どこにもないはずの街の光景は、まるで集合無意識が見せる夢のように、どこか懐かしさと不穏さをともなっています。絵の具を幾層にも重ねて引き延ばして描いた絵画は、近づいて見ると随所に配色の妙が表れ、離れて眺めると都市の姿が浮かび上がります。絵画を構成する色層は、作家によると都市を行き交う情報や、そこで暮らし活動する人々の夢や欲望でもあります。近づくと抽象画に、離れると具象画になって映じる山崎の作品は、抽象でもあり具象でもあるような絵画です。
宝塚市立文化芸術センターがある場所にはかつて宝塚ファミリーランドという遊園地があり、宝塚で育った山崎もしばしばそこを訪れていたといいます。本展には、生成AIの創出する都市と山崎のおぼろげな幼少時の記憶との共作といえる、高層ビル群に遊園地が描き加えられた新作が展示されます。集合知と個人の不確かな記憶の融合からなる絵画は、あらゆる情報や現象がデータ化され、日々増殖と更新を続ける現代を生きる私たちにとっての、架空でありながらリアルな都市の姿を現出させます。
本展覧会では都市の光景を描いた代表的な作品のほか、約6.5メートルにも及ぶ大型の最新作や、多数のドローイング、鉄板絵画など総数約100点をご覧いただけます。山崎にとって公立の文化施設では初めての大型個展です。ぜひご注目、ご来館ください。
開催概要
【名 称】 山崎雅未 Mami Yamasaki | Anywhere
【会 期】 2025年8月8日 (金) ~ 9月15日 (月・祝)、34日間
【休館日】 毎週月曜日 ※8月11日 (月・祝)、9月15日 (月・祝)は開館。それぞれ翌火曜日が休館
【時 間】 10時00分~18時00分(最終入場は17時30分まで)
【会 場】 宝塚市立文化芸術センター メインギャラリー(兵庫県宝塚市武庫川町7番64号)
【観覧料】 無料
【主 催】 宝塚市・公益財団法人宝塚市文化財団
【協 賛】 株式会社メルコグループ 【後 援】 宝塚市教育委員会
展覧会の見どころ
①最新作が登場!作家の「今」が分かる
幅6.5mにおよぶ大型の最新作が登場!ダイナミックかつ鮮やかに綴られる都市の色彩をご堪能いただけます。
②代表作を一挙に展示!作家の「これまで」が分かる
都市の光景を描いた作品を中心にこれまでの代表作を一挙に展示いたします。
作家が都市の肖像とどのように向き合い、表現してきたのか——作品群による追体験をお楽しみいただけます。
③多種多様な作品群!作家の持つ「豊かなバリエーション」が分かる
アクリル絵画のほか、ドローイング作品、鉄板絵画など幅広い手法で作家の世界観を知ることができます。
★本展のための新作を含め、総数約100点をご覧いただける展覧会です。
関連事業
トーク イベント
日時:8月9日(土)14:00-15:30
会場:宝塚市立文化芸術センターメインギャラリー内
定員:40名 *先着順 *当日13:30よりメインギャラリー受付にて整理券配布
登壇者:山崎雅未
牧寛之(株式会社メルコグループ代表取締役)
能勢陽子(東京オペラシティ アートギャラリー シニアキュレーター)
カタログ
山崎雅未 星 Mami YAMASAKI étoile
執筆:能勢陽子
翻訳:ダリル・ジングウェン・ウィー
デザイン:サイトヲヒデユキ
写真撮影:溝⼝ 拓
発行:anonymous art project
2025年8月発売予定
主な出品作品







<参考>
展覧会に寄せて
山崎雅未
このたびご縁をいただき、私の育った宝塚の地で個展を開催できることを、とてもうれしく思っております。
私は大阪府高槻市に生まれ、 3歳から宝塚市で育ちました。子どもの頃から人との関わりにあまり興味を持てず、絵を描いたり、本を読んだり、ゲームに没頭することが、私にとっての「世界」でした。
中学生のときに出会った画材、シュミンケ・ホラダム透明水彩絵具の美しさに強く惹かれたことをきっかけに、私は人生に向き合うことを決めました。
美術科のある高校に進学しましたが途中で中退し、大検(高等学校卒業程度認定試験)を経て、東京・立川の美術予備校を経て、多摩美術大学に進学しました。大学でもなかなか馴染めず、卒業後はしばらく筆が止まってしまった時期もありましたが、「描きたい」という炎は消えることなく、社会人として働きながら制作を続け、展示を重ねてきました。
オーストラリア、メルボルンでの路上制作や、東京のレストランでの似顔絵描きなど、さまざまな経験を経て、数えきれないほど賞に応募し、落選を繰り返しながらも挑戦を続けたことで、少しずつ受賞できるようになり、たくさんの偶然やご縁を通じて、今回の個展へとつながっていきました。
今回の展示では、都市の夜景や風景をモチーフに、都市に宿る静けさとエネルギーを描いています。目の前の風景が、誰かにとって心のどこかと重なるものであれば、これほど嬉しいことはありません。
これらの風景は、どこかであって、どこでもないのです。
ふるさとの地で作品を見ていただけることを、心から楽しみにしております。
「山崎雅未|Anywhere」に寄せて
能勢陽子(東京オペラシティ アートギャラリー シニアキュレーター)
山崎雅未は、人工知能が創出したどこにもない都市のイメージを、自らの身体を介して再び描き出す。多彩な絵の具を塗り重ね、スキージで引き伸ばして描いた夜景は、具体的な都市の像でありながら、絵の具の質感を露わにしつつ、随所に配色の妙を生む。それは、近づくと抽象画に、離れると具象画になって映じる、抽象でもあり具象でもあるような絵画なのである。
何層にも重ねた色彩は、表面からは見えない都市の深層を露わにする。鋪道にできた水溜りに映り込む色とりどりのネオンや、商業ビルや高層マンションから漏れる灯りは、資本により駆動する都市の欲望を映し出しているようである。その眺めは、都市に暮らし、活動する人々の集合無意識が見せる夢のように、どこか儚さと不穏さを伴っている。
画面を仔細に眺めると、濃紺に橙や赤、緑、またはピンクに青や黄などが徐々に混在して、色調が変化していく。暗く沈んだ色の合間に鮮烈な色が差し挟まれる色彩の組み合わせは、この作家独自の感性によるもので、相反と調和の双方を兼ね備えた魅惑的な画面を構成する。重ねた絵の具を引き伸ばして描く技法は、作品に偶然性を取り込むための手段のようでもあるが、おそらく色も線も作家によって万全にコントロールされている。巨大なカンヴァスを相手にしたときにも素早く描き上げられる画面全体は、作家によって予め予見されていたものではないかと思わされる。
山崎が日課のように描いている大量のドローイングは、都市の光景を描いた絵画とはまた異なる魅力を持つ。それは絵画のための下絵というより、イメージを結ぶ前の目的地を定めない散歩のような、より気楽な親密さを抱かせる。しかしそれらは絵画の周縁に位置付けられるものではなく、手の動きに合わせて滲み広がる水彩ドローイングは、この作家の優れた色彩感覚の純粋な発露となる。
本展では、水辺に面した摩天楼の手前に観覧車やメリーゴーランド、ジェットコースターが描き込まれた新作が出品される。高層ビル群を形成する縦と横の線が際立つ画面の下部に、観覧車の円やジェットコースターの曲線が加わる。山崎が個展を行う宝塚市立文化芸術センターの敷地にはかつて遊園地があり、宝塚で育った作家もしばしばそこを訪れていたという。この大作は、いわば生成AIの創出する都市と、山崎のおぼろげな記憶との共作といえる。人工知能が紡ぎ出す光景は、世界中に氾濫する都市のイメージを集約した「どこにもない(Nowhere)」場所である。対して、山崎の記憶のなかの遊園地は、正確な姿ではないものの、幼年時代の記憶に繋がる「どこでもある(Anywhere)」場所である。なぜなら、幼少期の同様の記憶は、誰もが持っているものだからだ。集合知と個人の不確かな記憶の融合は、過去とも未来ともつかない、儚く、どこか懐かしくもある光景を現出させる。それは、あらゆる情報や現象がデータ化され、日々増殖と更新を続ける現代を生きる私たちにとっての、都市の姿といえるだろう。流れる線と色により、現れては消え、消えては現れる都市のイメージは、私たち人間の記憶に触れる知覚を振動させるのである。
【広報問い合わせ先】
株式会社いろいろ
Email:press@iroiroiroiro.jp
【広報以外の問い合わせ先】
宝塚市立文化芸術センター
電話:0797-62-6800 (開館日の10時~18時)
Email:tac@takarazuka-c.jp
住所:〒665-0844 兵庫県宝塚市武庫川町7番64号